第11話


 テトの叫びに、ジルは可笑しそうに笑っているが、私は顔から火が出そうな程恥ずかしかった。




「ともかく、サチはかなり強い魔力を持っている。これは凄いことだが…」




 ジルは、言葉を選んでいるようだった。






「困ることも多い、だよね?」



「…そうだ」



「こまること?どうして?」



 ピンと来ない様子のテトに説明する。



 『ねこダリ』の中でも所々現れた〈聖女の力を狙う〉シチュエーション。ルート毎に敵は違ったが、どの敵も聖女の力を悪用しようと、ヒロインを誘拐したり、監禁したり…最悪の場合、命を狙われていた。




 また、ヒロインが上手く魔力を扱えず、魔力暴走が起きてしまうことも度々あった。これは画面上で見てる分には笑えたが、現実に起きたら笑えない…。




 聖女でありヒロイン、この世界では、恐らく私がいると、こういったリスクがある。そして、私の命だけでなく、ジルとテトの命も危うくなるのだ。







「まもるよ、ぼくが、サチをまもる!」



 テトは考える間も無く、ハッキリとそう言った。




「だけど、テトも危ない目に遭うかもしれないよ。それは嫌なの」



「じゃあ、サチひとりだけ、あぶないめにあうの?そんなのいやだよ!」



「テト…」



 私の身を案じてくれるテトを見て、嬉しさと、巻き込んでしまう申し訳なさが湧いてしまう。



「テトの言う通りだ。サチを危険な目に遭わせたくないのは俺も同じだ。考えよう、方法はあるはずだ」



 この国一番の魔術騎士と、その一番弟子がいるんだからな、とジルは悪戯っ子のように笑う。テトも得意げだ。




「とりあえず、サチには明日から魔力の使い方を教えていく。サチが自分を守れるように」



「ぼくは!ぼくはなにができるの?」



「テトも明日からレベルアップだ。テトには、結界魔法の適性があったから、これを鍛えたい。俺だけで掛けるより、ずっと質が上がるだろう。悪い奴等からサチを守れる」



「やる!ぜったいやる!がんばる!」


 テトはやる気満々で、力こぶを見せた。





「私…私がジルとテトを守ることもできるようになる?」



「勿論だ」



 優しく微笑むジルとテトを見て、ここが私の家になったのだと、胸が熱くなった。




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