聖女系ヒロイン誕生!

第9話



 ふと目覚めると、ソファの上だった。あの後、泣き疲れてそのままテトと眠ってしまったようだ。私の腕の中で、テトはぐっすり眠っている。



「起きたか?」


 パッと視線を動かすと、ジルが帰ってきていた。



「お帰りなさい、いつの間にか眠っちゃってた」


 帰ってきたら、お出迎えしたかったのになぁ、とがっかりした気持ちになる。



「家中、綺麗になっている。ありがとう、助かった」


 掃除は不得手でな、と苦笑いを浮かべるジルを見て、役に立てたことにホッとする。





 ジルがテトを抱き上げ、ベッドに寝かせる。お茶を淹れようとキッチンに立つと、ジルが嬉しそうに横に並ぶ。


「誰かが、お茶を準備してくれるのはいいものだな」


「と言っても、お湯を沸かせないんだけどね」


 昼間は保温瓶に入ったお湯で淹れられたが、流石にもう冷えてしまっている。ジルが一瞬で適温のお湯を準備してくれ、すぐお茶は淹れられた。




 二人でソファに座り、ゆっくりお茶を飲む。



「サチ、君のいたところについてなんだが…」


 ジルは少し言いづらそうに、話し始めた。




「サチがいたところは、その…」


「うん、ジルが考えている通り、ここじゃない別の世界。」


「やっぱりそうか」



 ジルは気付いていたようだ。別の世界から来た私がここにいてもいいのだろうか。やっぱり私の居場所はなくなってしまうんだろうか。ジルに、どう伝えようか、考えていると、震える声が聞こえた。



「サチ、べつのせかいってなあに?そこにかえっちゃうの?」


 テトがポロポロと涙を流しながら、ベッドから出てきた。さっき、テトの辛い過去の話を聞いたときでも泣かなかったのに。



「サチ、かえらないで。ジル、サチをかえさないで。」


 いやだ、いやだ、と愚図りながら、私とジルの手を握るテト。こんなにも想ってくれていることに、私まで胸が苦しくなる。



「テト、落ち着くんだ」


「だって…」


「まず、俺は帰すつもりはない」


 私は、別の意味でドキドキしてしまった。そんなつもりでジルは言っていないのに。一瞬、顔を熱くした私を見て、それを見透かしたようにジルはニヤリと笑っている。わ、わざとだ!ずるい。




「サチがどこから来ていようと、追い出したりなんかしない。昨日話したように、いつまでもここにいていいんだ。そして、これは、サチには悪い話だが…」






「元の世界に戻る方法はない、でしょう?」


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