番外編:変遷 ⑤
後ろから抱き締める彼の腕に力が籠った。そのまま、ジョアンナの顔に手を添えられ口づけられる。優しく、大事そうに触れるだけの口づけが、徐々に激しいものへと変わっていく。唇を啄まれたと思ったら、腔内に何かが侵入してきた。
「―――っ、んっ!」
体が酸素を欲して、慌てて離れようとするがそれは許されない。より奥へ侵入してきたのは彼の舌だとジョアンナは上手く働かない頭で漸く気付いた。閨の時だけの口づけがあることは知っていた。だが、こんなにも激しく熱いものだとは思ってもみなかった。
「はぁっ、はぁっ……」
サムが離してくれたのは長い時間堪能した後だった。ジョアンナが肩で息をしているのを見て、優しく微笑む。その瞳はまるで……。
「……行きましょうか」
サムの声をぼんやりと聞いていると、急に体が浮遊した。彼が自分を抱きかかえていることに気付き、ジョアンナは小さく首を振る。
「自分でっ、あ、歩けますから……」
息も絶え絶えなジョアンナをサムは満足そうに見つめた。「俺がこうしたいだけなんで」と決して下ろそうとはしない。「寝室はこっち?」と問われ、ジョアンナは必死で平静を保って頷くが実際はサムの一言一言に耳が蕩けそうになっている。
丁寧にベッドの上に下ろされるとまた口づけられる。そのまま、ジョアンナのシャツの釦に手を掛けられるが、彼女は大きく身を捩った。
「ま、待って……っ」
「……止まらないって言ったじゃないですか」
「お願い……少しだけ」
彼の胸に遠慮がちに擦り寄ると、何度も深呼吸する。その様子を見たサムはジョアンナの背中を擦り、額に、頬に、耳に、口づけていく。明かりを全て落とすと、ジョアンナを毛布の中に入れ、自身も隣に横たわり彼女をきつく抱き締める。
「……少し、慌てました」
ジョアンナを見つめるサムの瞳は、酷く甘い。
「ゆっくりするから怯えないで下さい」
そう言ってまた熱い口づけが始まる。サムの瞳は、まるで本当に愛されているのかと錯覚してしまいそうなほど甘すぎる。
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