第42話



 クラウディアの婚前準備は公爵家の使用人たちで行うことになった。本当なら、そこに夫側の使用人たちも加わるのだがこれまでの経緯から遠慮してくれたのだ。テオドールの使用人たちだって、随分長い間女主人が来ることを心待ちにして、妻となる人間の婚前準備も楽しみにしていただろう。



 本当に甘えても良いものなのか悩むクラウディアに「どの使用人も、お仕えする方が幸せになる瞬間に立ち会えることが何よりの幸せなのです。どうか、その瞬間を公爵家の使用人たちへ贈ってあげてください。」とジョアンナに背中を押され、クラウディアは公爵家の使用人たちと共に婚前準備を行うことになった。



 父にエスコートされ、教会に入る。両家の使用人たちも全員が出席している。母のウエディングドレスを身に着けたクラウディアを見て涙を流す者も多い。サムは喜びでわんわんと泣いており、周りの出席者が呆気に取られるほどだ。ジョアンナは呆れ顔で彼を慰めている。




 奥の方にはアネットがレジナルドと座っており、こっそりとクラウディアへ合図を送ってくれた。どうしてもクラウディアのウエディングドレス姿を一目見たいアネットがレジナルドをいつものように誑かし、出席が叶ったのだ。



 アネットはクラウディアが王宮に居た頃に周りに置いていた選りすぐりのイケオジたちも連れて来てくれている。彼らもクラウディアの晴れ姿に男泣きしていた。






「ディア……綺麗だ。」



 テオドールの目の前に立つと、くすぐったくなるほど甘い眼差しで見つめられ、クラウディアは小さく頷いた。正装姿のテオドールの方も凛々しくクラウディアの胸は高鳴った。



「テオドール殿……娘を、どうか……。」



 最後の方は言葉にならなかった。そんな父の姿を見たクラウディアもまた目に涙を浮かべ、テオドールは深く頷き「生涯大切にすることを約束します。」と告げた。



 隣に立つテオドールをこっそりと見上げると、テオドールもまた見つめ返す。クラウディアの胸はじわじわと幸せでいっぱいになる。長い間酷使されていた彼女は、暗闇を抜け、一人のイケオジに深く愛される日々が始まる。







<婚約破棄された公爵令嬢は、イケオジ沼に突き落とされる。:完>




 最後までお読みいただきありがとうございました!番外編もありますので引き続きお楽しみいただければ幸いです。宜しくお願い致します!


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