【まさかのゲスト!?】AIの世界
海星めりい
【まさかのゲスト!?】AIの世界
「今回はこちら! AIの世界!」
甲高い声の後にパチパチと拍手が鳴り響く
ここは有隣堂内に存在する収録スペース。
今現在、ここでは『有隣堂しか知らない世界』という動画の収録が行われている。
この動画は『R.B.ブッコロー』というミミズクが有隣堂や本、文房具などについて色々語ったり、商品を紹介したりするというもの。
大体、ゲスト(という名の有隣堂の社員だったり)が一緒なのだが、
「AIの世界って事なんだけど……これ、流行りに全力で乗っかっているよね?」
タイトルコールを終えたブッコローが呆れた声でいきなりぶっ込んできた。
ブッコローは基本的に忖度をしないので思ったことをズバズバ言っていく。今回もブッコロー節がいきなり出た形だ。
「「「はははははは……」」」
「いやいやいや! 笑い事じゃないのよ!」
思わず漏れ出るスタッフの笑い声にブッコローがツッコむ。
「こういうのよくないと思うなー。私さ、こういう安易な流行りに乗っかるのあんま好きじゃないのよ。あの色々答えてくれる系のやつやって、面白おかしくやろうって魂胆でしょ?」
「それがちょっと違うんですよ」
「違うの?」
Pの返答にブッコローは思わず目を丸くする。自分の予想が外れたのが意外だったようだ。
「じゃあ、あれだ。AI対私で当たり馬券予想勝負とかそういう感じだ。絶対そうでしょ!」
休日には競馬場に行くという趣味を持つブッコローは、競馬の当たりを予想するAIとの勝負だとなぜか確信したようだった。
テンションが上がったブッコローに対し、Pが冷や水をぶっかけるように口を開く。
「(馬券じゃ)ないです」
「え?」
くちばしを大きく開けてしばし無言になるブッコロー。
「撤収―! 帰ろう、帰ろう! 普通のAIと私がなんかやっても面白くないよ。馬券やりたかった!」
駄々をこねるブッコローに対しPはノートパソコンをブッコローの前に差し出す。
「何これ?」
「(とりあえず)開いて下さい」
「馬券勝負やりたかったなー」
などと、ぼやきつつもノートパソコンを開いたブッコローは次の瞬間、両翼を開いて驚くことになった。
なぜなら、ノートパソコンの画面には――
「私だー!? 私がパソコンの中にいる!?」
ブッコローが映し出されていたのだった。
「今日のゲストです」
「ゲストっていうか私だけどね。AIブッコローってこと?」
「はい」
PによるとAIにブッコローを学習させて、ブッコローの声を搭載したモデルとのことだ。話しかければ、少し時間は掛かるが返答してくれるらしい。
「えぇ? 勝手に私の声使ってんの? 許可は?」
「え?」
「私の許可がいるでしょー。AIブッコローもそう思うよね?」
『……許可なしはダメでしょー。反省してください、ホントに』
ブッコローの問いかけにAIブッコローが答える。
「すっげー、マジで答えてるよ。こんな感じで適当に質問していけばいいわけね?」
「そうです」
Pの言葉に大きく頷いたブッコローはAIブッコローに何を質問しようかと頭を捻る。
「何にしようかな……ホントに私なのか確かめるのとか良さそうじゃない? うん、そうしよう」
ブッコローはとりあえず何個か質問をしていくことにした。
「私が好きな文房具は?」
『……三代目直○ペン』
「おー、スゲーホントに学習してるっぽい」
『でも、買ってはいない』
「ん?」
なんか余計なこと言ったような? とブッコローはノートパソコンを見るもAIブッコローは微動だにせずにただそこにいるだけだった。
「まま、次行きましょ、次! 私が嫌いな食べ物は?」
『……鳥は食べないかなー。小っちゃい子も見てるから』
「嫌いというか食べちゃいけない系だけど……まぁ、合ってるか」
『でも、最初はこっそりとか言っていたのに、最近は気にせずに唐揚げやチキンをバクバク食べている』
「あ?」
まさかの追加された答えにスタッフから笑い声が漏れ出る。
ブッコローは軽くノートパソコンのAIブッコローを叩いて文句を吐き出していく。
「なんかコイツ性格悪くない!? 補足説明が悪意しかないんだけど!? 誰! こんなのゲストに呼んできたの!?」
「ほぼほぼブッコローだよ?」
「私、こんな性格悪くないよ!?」
「「「いやいやいやいや」」」
スタッフ全員から突っ込まれ、形勢不利だと思ったのかブッコローは翼を×にする。
「これ以上。AIブッコローに喋らせるとマズいと私の直感が言っているのでここで……止めたいと思います! 尺的にもいいでしょこれくらいで?」
Pが頷いたのを見て、ブッコローは動画の〆に入ることにした。
「はい、というわけでAIの世界でした! それでですね。このAIブッコローがこの動画が公開された後、有隣堂の公式ホームページからダウンロードできると――」
「出来ないです」
「そんなこと言って実は……?」
「ないです」
『……ケチな会社だねェ』
「そんなのまで学習してんの!?」
AIブッコローの最後の言葉にブッコローが驚愕し、全員が大笑いしたところで収録は終わるのだった。
【まさかのゲスト!?】AIの世界 海星めりい @raiki
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