第9話【当時の既刊本の広告から】
前回からの流れになりますが、各書籍の後ろには、何ページか既刊本の広告が掲載されていました。今もそんなことってあるのかわかりませんが、その頃はそんなふうになっていたのです。
その広告に書かれている紹介文を読めば、少なからずその作品の雰囲気がわかりました。
せっかくなので気になった作品を二つだけピックアップしてみたいと思います。
一番気になったのはゲームブック、『忍者への道』(カーティス・スミス氏)です。
その説明文をもとに、要点を箇条書きにします。
・時は中世、蒙古襲来の噂が飛び交っている。
・忍者の暗躍がはびこる九州博多が舞台。
・長明先生の道場で、『若いさむらいたち』(当時の表記のまま)の卒業試験が迫っていた。
・恐るべき秘密が隠された過酷な試練!
広告からわかる情報は以上の四つなのですが、何かおかしくないか?
蒙古襲来というと、『元寇』の時代ですかね。1274年と1281年。文永の役と弘安の役だったと思いますが、その時代、忍者っていたのか??
調べてみますと、記録に残っているのは南北朝時代よりも後とのことで、そこから100年以上も後の話みたいですね。
あと、タイトルが『忍者』とあるのに、『若いさむらいたち』(ひらがな表記だったのでそのまま使っています)と、全く別物になっていますね。実際にプレイしたことがないし、手元に原本が無いのでわかりませんけれど、忍者にクラス替えして卒業試験に挑むということなのでしょうか??
昭和62年に日本で出版されましたけれど、まだまだこの時代は日本という土地が世界的に知られていない時代だったのだろうと思います。
いわゆる『なんちゃって日本』的な世界でしょうけれど、それを言うならば、日本人の描く異世界ファンタジーだって、『なんちゃって欧州』です。だから『ナーロッパ』などという言葉も生まれたのでしょうけれど、いつの時代も考えることは一緒ですね。
もう一つ。前々回で少し取り上げた『スカイフォールシリーズ』。第一巻の『魔人の沼』についての広告がありました。
・スカイフォールは自然に恵まれた美しい惑星。
・嵐の海に面した『きみ』が暮らすデルタ王国。
・旅人たちを襲う危険な生き物が生息。
・『きみ』の父親は船もろとも消息を絶った。
・冒険者の『きみ』は父親を探しに行く。
これだけ見れば、単なる探索型冒険ですけれど、地球から宇宙船に乗ってやってきたなどという話、どこにも書いていません。SF要素、ガン無視です。
更におかしな点は、『船もろとも消息を絶った』と言いつつも、タイトルは『沼』。『海』じゃないのか!? 嵐の海に面したという設定、全然いらないじゃんっ!
これも原本を持っていないので、実際はどんな作品だったのかはわかりませんが、思わずツッコミを入れてしまいました。
今だったらおかしな点は修正されているでしょうけれど、この時代はその場の勢いで行っちゃっていたのかも知れません。
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