第4話【その頃の富士見書房 『ドラゴンランス戦記』 その1】

 自分が最初に購入した富士見書房関係の書籍かどうかは覚えていませんが、『ドラゴンランス戦記1 廃都の黒竜』(マーガレット・ワイス氏、トレイシー・ヒックマン氏共著。安田均氏訳)かなりそれに近い頃だったと思われます。

 初版発行日を見ると、『昭和62年5月20日』(1987年)付けですので、当時とすれば恐らく4月下旬頃に発売していたのではないでしょうか。460ページ程の大作で、分厚い文庫本でしたが、当時は定価580円(消費税導入前です)。この時代は300ページくらいで480円の時代でしたので、若干高めの設定でした。


 今も残っている帯の背中を見ますと、『ドラゴンノベルズ創刊』の文字がうたわれています。更に表側には『ファンタジー小説の新しい波!』とも。

 『全6巻』と予告されていますが、私が購入したのはこの第1巻のみ。多分自分に合わなくて、途中で読むのをやめたんじゃないかなと思います(いつか読んでみようかと思いますが)。


 後ろカバーの折りこみ部分には既に『第2巻 城塞の赤竜』のタイトルが記載されていましたから、恐らく同時発売で一気にファンを掴もうとしたのでしょう。この時代は国産のファンタジー小説もほぼ皆無でしたから、外国産のもので、ゲームブックや『D&D』(当時TSR社、日本語版は新和社)に近い世界の物語を世に送り出したのだと思います。


 実際この『ドラゴンランス戦記』は、『D&D』とからんでいました。何故かと言えば、表紙絵の左上に、公式ロゴマークがしっかりと印刷されていました。当時『ビックリマンチョコ』で流行ったヘッドシールみたいなキラキラ仕様です。今、こういうのってあるのか知りませんが、光の加減で虹色に輝くお洒落なものでした。

 ただし裏表紙の説明文を読む限りは、『AD&Dに基づいて作られた』とありますので、本来はそちらなのでしょう。全米で二百万部の大ベストセラーとも書かれていました。因みに『AD&D』は『アドバンスト・ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ』の略です。このエッセイを読まれている方は、もちろん知ってますよね?

 それでも『D&D』のロゴマークを使用していたのは、これしか存在していなかったのか、知名度的なものなのか。


 当然本を開けば『TSR社』のロゴ。一番後ろのページには、当時すでに発売済だった日本語版『ベーシックセット』(赤箱!)と『エキスパートセット』(青箱!)、その他関連商品(様々なモジュールやメタルフィギアセット!)の紹介などが掲載されていました。要は広告なのですが、この頃はまだまだTRPGは日本でなじみがなく、またファンタジー小説をこれから展開させる上で、相互協力だったのかも知れません。


 話が長くなりそうなので、いったん切ります。

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