ep12 メッセージ

 途端に彼の胸はざわめく。

 普段は少し間を置いてからメッセージを開けるのが常の山田ナゴムも、このときばかりは中身が気になりすぐに確認する。



『おつかれさまです。

 先日はどうも。

 突然なんだけど、

 飲み会やりませんか?』



 ナゴムは一瞬かたまる。


(えっ、なんでいきなり?)


 当然だ。

 ヘタしたらもう二度と会うこともなければ連絡を取ることすらないかもしれないと考えていた相手だったから。

 なにより糸緒莉の方がそう考えているだろうとナゴムは思っていたから。

 

 なのに、あちら側からこのようなメッセージが来たのだ。

 相手の真意はどうあれ、ナゴムはすこし嬉しい感情を覚える。


(......と、とりあえず返事しよう!)


 彼はすぐさまメッセージを返すと、二人のラリーが始まる。



『しおりさん

 おつかれさまです。

 飲み会、イイですね。

 でも、本当に突然だね』


『や、やっぱり急でビックリよね!?』

 

『正直...w』


『実はね?

 地元の友達とこの前のこと話したら、妖同士で協力しあったらどうだ?て言われたの。

 私って、東京出てきてからは妖とは一切関わってなかったのね。

 それで思ったの。

 確かに東京で協力し合える妖仲間がいるのはいいことかなって。

 こっちでは妖と関わることもないと思っていたけれど、山田くんは私と一緒で自分が妖であることを隠したい人だから、メンドクサイことにもならなそうだしね。

 あ、ちなみに、その地元の友達も妖よ』


『そういうことなんだね。

 そういえば俺も東京では妖とはまったく関わってないなぁ。

 地元以外で関わるつもりもなかったし。

 でも、しおりさんの言うことも、もっともだね。

 俺でよければ、協力しあいましょう。

 同じ、妖であることを隠したい者同士ね。

 で、なんで飲み会?w』


『山田くんって、出会い求めてるんでしょ?

 それは私もおんなじ。

 だからお互いに同性の友達を集めて飲み会をやればいいかなって』


『なるほど!合コンってことか!』


『ちがう!飲み会!』


『ま、まあ......どっちでもいいよw』


『よくない!飲み会なの!』


『わかりましたww』


『もうっ!』


『でも、妖同士で協力しあう最初のことが飲み会って、なんか笑えるかも』


『うんww』


『じゃあ、具体的にどうしようか』


『そうね。そうしたら......』



 このようにして、ナゴムと糸緒莉のやり取りが進んでいく一方で......。


 はじめたばかりのマッチングアプリに期待と不安を織り混ぜながら、〔ながほ〕は山田ナゴムに返信していた。


『ありがとうございます。

 是非、お食事行きましょう。

 わたし、今月だと◯日と◯日ならお休みで一日空いています。

 お仕事の後なら、◯日と◯日なら早番なのでお時間合わせやすいです。

 山田さんのご都合はいかがですか?』

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