第9話

 一仕事終えた田村の横で大家が警察に連絡を入れていたので、一応刺しておいた。


 田村は家の中に戻り、床で割れた鉢植えの前で膝をついた。


 田村は言う。


「やったね、お花さん」


 田村は言う。


「お疲れ様、田村君」


 田村は鉢植えを持ち上げる。割れた破片がぼろぼろと床に落ち、田村の手元に残ったのは鉢植えのほんの一部になっていた。


「もう邪魔者はいないよ」


 鉢植えの底から、壊れたスピーカーとマイクが落ちた。


「これからはずっと、ずっと一緒ね」


 田村はそのことに、最後まで気が付かなかった。


 最後まで、物言わぬ花と話し続けていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

なれなれしい花 ポピヨン村田 @popiyon_murata

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ