第6話
田村が無断欠勤を始めて、早5日が経とうとしていた。
さすがに見過ごせなくなり、四方山は上司として田村のアパートに赴くこととなった。
心配だ。いくら電話しても通じないし、花からも何も聞こえない。
優しい四方山のことだから、花のことで思いつめてしまっているのかもしれない。こんなことから最初から花に頼らず、きちんと素直な気持ちを伝えるべきだった。
呼び鈴を押しても案の定反応がないので、アパートの大家同伴の元、鍵を開けてもらう。
四方山は反省していた。
これからは恥ずかしがらず、しっかり田村に向き合おう。そして自分自身の言葉で田村に気持ちを伝えるのだ。
まず、よく寝てもらうよう素直な言葉で伝えよう。
睡眠は心の栄養だ。今までは遅くまで連れ回してしまったが、今後はどうかゆっくりと休んでほしい……。
「田村君、いる? 会社に連絡の一つもないから心配で……」
そのとき、腹部を鋭い痛みが貫いた。
何が起こったかわからず、四方山は一歩、二歩と後ずさる。隣に立っているはずの大家の悲鳴が、とても遠くに聞こえた。
「やった! やったよお花さん、僕やったよ!」
子供の用にはしゃぐ声が聞こえる。その場にへたりこんだ四方山の頭上に、ぽたぽたと赤い液体の流れる包丁を持った田村が、満面の笑みで立っていた。
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