秋雨

@sho-pasta

秋雨

うっとうしいほどに湿った風が教室の中を通る。先生のおめでたいお話は風に乗って消える。普段の授業なら、決してこのようなことは思わなかっただろう。なにせ今日は体育祭のはずだったのだから。


体操着のまま登校したので、クラスの皆は俺を含めて体操着のままだった。開会式の時にいきなり雨が降り出したのだから神にあそばれたように感じる。




雨脚がさらに強まった。




窓を閉めてもなお雨の音は激しく聞こえ、先生の低い声はもはや意味をなしていなかった。窓から見えるグラウンドの白線は既ににじみ消えていた。




雷鳴が轟いた。




ここまで来ると、もう笑うしかなかった。教室内はざわめき出した。先生はちょっと待てとジェスチャーをして、教室から出て行った。休校になるんじゃない、といい出す友だちもいれば、我関せずと読書するのもいた。


しばらくして、先生が教室に入っていうことには、雨が弱まったら順次下校、ということだった。先生は再度いなくなった。雨は無慈悲にも雷を伴って強く降った。空は暗かった。




……フルーツバスケット……


誰かのつぶやきが聞こえた。俺はなんとなく黒板に歩いて行き、フルーツバスケットと書いた。ふと見ると、俺の後ろの席の女子がうつむいていた。


「僕はいすとりゲームがいいかな」


「私は花いちもんめ」


………………


俺はいつのまにか書記係になっていた。教室の中は明るい声が響いた。


「じゃあ始めはフルーツバスケットからで」


久しぶりにするゲームに、始めは少し戸惑いがあったが、だんだんと思い出してきた。




黒板に出したゲームを全て終えるころには、夕方になっていた。わいわいしゃべりながら遊ぶと時間ははやく過ぎた。


カーテンを開けるとまだ空には黒い雲があった。でも少しだけひらいた青空に虹がかかっていた気がした。

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