第4話



「簡単じゃ無さそうすけど……、余裕そうっすね」

 と、鼻歌を歌う上機嫌な師を見るアスラ。


 先にスライムの討伐の任務をする事にした二人。

 だから二人はそのまま転送の魔石を使った魔導転送装置で魔石を使った魔道車や馬車だと数ヶ月かかる地にひとっ飛び。

 出来た当初は画期的だと世間で注目されたが、魔石の消費が多く今はギルドや教会など必要としている公共の場にのみ設置されていた。

 そんな悲しい存在から出ると、紫蘭が一言。


「うっ……、酔いはしないが、慣れんな」

 と、呟きながら出る。


 それに「酔ってんじゃないすか……ゲロここで吐かないでくださいネ!」とアスラが突っ込む。睨む紫蘭のその後に続いた。

 

 転送機から出たところは人や害のない場所から採れた魔石を輸送するための交通機関が置かれていた。

 少し歩いたところにくだんの場所━━魔の森がある。

 その魔の森。大昔魔族、獣人。人間たちの戦争があった。その慣れ果てのようなもので、戦火に散った多くの魔族や獣人、魔物が死に、魔石化したそれが木のように蔓延り、森の様に鎮座。

 目の前のその森は七色に輝くクリスタルとなっていた。

 その美しさとは裏腹に人には毒の霧を撒き散らしていた。危険なため、多少に飛ばない様、風や毒耐性のある魔石が練り込まれた壁で遮られている。


 魔石の多くあるせいか、そのせいで採掘もままならない。更にスライム━━稀に魔物を倒して、魔石化し始めた時。稀に魔石本体から漏れ出る。またはその体が溶け出して出来る黒い液体。

 それが意思を持ち蠢く。

 そのタール状のモノ。

 それらもまた、毒を放出しているという報告もあり迂闊には近づけられない森となっていた。


(この人が連れてるやつもそうなんだけど性癖、かもしれないし仕方ないよな……スライム追加かあ。

 あんま詮索しないほうがいーよな?

 師弟お願いしてから俺の中のししょーどんどんおかしい奴に。ま、バケモンでも煽ったり観察してて面白い人だし良いケド。

 

 この任務もあんま乗り中しねーし……ししょーに任せよっかなぁ)


 と、師が堪え切れずトイレ行っている間一つ目の猫耳の物体を思い出し、勝手な解釈をする。そしてアスラはここから少し離れた位置にある関所の場所を探すためガラス状のタブレット、通信機をいじる。

 これもまた魔石が付いていた。


 彼ら天人たちは短時間であれば中で行動しても問題ない。そういうことで彼らに任務、視察が来た。

 必要があれば不法に採掘している輩を断罪、スライムたちの駆除という任務。

 アスラは戻って来るまでそれを確認した。

 

(……別に俺らでなくともいいだろーに……名声、のためかなぁ。ま、歩いてちょっとならまあ楽だけど。

 俺の新人研修と思えばいっか

 ……紫蘭様大丈夫かなぁ? 普段飛んでるから地上の乗り物だと弱々なんだよなぁあの人。それで何回か窮地に陥ったの覚えてるんかなあ?

 あれは……鉄の竜の国だったっけな? 魔石付きの乗り物の大御所だったせいかずーーーっと乗り物乗り物で死んでたな。ししょ。

 

 ……どっちにしろ研究部に酔い止めの魔石、作って貰うか!!)

 

 そうこうしていると気分悪かった割に紫蘭がスタスタ戻ってきて一応「大丈夫すか?」と聞くとちょっと睨んだ。

「大丈夫そうっすね!」とにっこりして「行きますよ」とマントを引っ張った。


「魔石の需要が高いしー、そろそろ、ここも開拓したいって感じすかねえ」

 と、いじりながら歩く。


「……ふん、興味がないな」

 と、不機嫌になる紫蘭。

 まだ吐きたりないのかたまに口を塞ぐ。

 そしてよろよろと後について行く。


「どうせ毒霧で採掘もままならんのだろう? 愚かな……」

 と、需要はあるが、商人や冒険者たち垂涎すいぜんの魔の森に踏み込めないが利は欲しい人々をボロクソいう。

「そもそもこの転送機から何故離れているのだ」と気分の悪さのせいか文句を言い始めた。体調が悪い分ぶつぶついう。


「それは察しって感じスけど、多分元々設置したのが商人だからすね」


「……ああ、」と、紫蘭がなら仕方ないと言った返事をした。


「とにかく、さっさと終わらせて貴方の気になる任務にいなかきゃですね」


 と、アスラもアスラでやる気なし。紫蘭でさえ、そのまま鎧は着ていたがアスラはいつの間にか着替えており、ジャージという身なりからやる気なし。


「もちろんだ! 『彼女』も椅子に待たせているし、どこだ? 案内しろ」と、紫蘭。

 さっきの気分の悪さは?とアスラが突っ込みそうになるも、

 ━━よし、と自分がやりたくないためにアスラはいい感じにお立ててうまく不調な紫蘭を使おうとするが、「おまえもやれ」と、釘を刺される。

 

「はあ……」

 

「そう上手くはさせんぞ。随分気は良くなったが、気分の悪い者を使おうとするとはその勇気だけは買っているぞ」

 とバレバレであった。ズバズバ痛いところを突き、「う」と唸る。

 

 

 そうして歩いている内に、次第に壁ばかりの景観になる。その壁を沿って歩いていくと


「えっと、あ、あそこ」


 と、教会の紋章のついた建物━━毒も噴出する為バリアを張る関所としてこの周辺の土地を守っていた。

 隣には礼拝堂もしっかりあった。


「紫蘭様、俺は騎士と話すから、スライムたち追い返してください」と、提案。とうとう直球でお願いし始めたアスラ。


「……」ジト目で嫌なんだろ? を表現されてしまう。


「ほ、ほら、適材適所すよ!!」と、焦って弁解。


「まあ、そういう事にしといてやる」


「も、もーーーやめてください」


 と、アスラは元パーティメンバーのそれのような声を出す。

 アスラはアスラで、「さっさと挨拶行ってこ」と挨拶のため施設に入っていく。

 紫蘭はそのまま森に入って行った。


(と言っても、俺は凍らせて砕けば良いんだがな

 あいつの方が楽だろうに。雑魚はやる気ないんだな)

 と、仕方なく向かった。

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