第9話

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ボロボロだった。全身火傷、右腕の肉離れと多量の出血。目立つ外傷はそれぐらいだが、灰崎の体は満身創痍であった。意識はとうに消失し、ただ死を待つだけの状態。

 そんな灰崎に近づく人影が一つ。

「……こいつは、こんなとこで何を寝てんだ」

 その人物は、うつ伏せに倒れている灰崎の顔を覗き込むと、不機嫌そうにそう言った。

 灰崎とは顔見知りであるかのような言動と、体調が悪そうな顔つき。

 如何にも、面倒くさそうなそんな刺々しい様相だった。

「ゴホッゴホッ……女連れでぶっ倒れんなよ……、助ける気力が削がれるだろ。ただでさえ、くそ汚染で体調最悪だってのに。余計に気分が悪くなる。……それにしても、どんな奴と戦ったらそこまでボロボロになるんだよ。……クソめんどくせーな、まったく……」

 男は、愚痴をこぼしつつも、一応、助けてはくれるようだった。

 灰崎と少女を脇に抱え、その場から立ち去ろうとする男。


「……こんな体でぶっ倒れて、なんでそんなに満足気な顔してんだ」

 

立ち去り際、男は灰崎を一瞥しそう独白した。


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忘れられた世界 @sinsin1234

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