第9話
10
ボロボロだった。全身火傷、右腕の肉離れと多量の出血。目立つ外傷はそれぐらいだが、灰崎の体は満身創痍であった。意識はとうに消失し、ただ死を待つだけの状態。
そんな灰崎に近づく人影が一つ。
「……こいつは、こんなとこで何を寝てんだ」
その人物は、うつ伏せに倒れている灰崎の顔を覗き込むと、不機嫌そうにそう言った。
灰崎とは顔見知りであるかのような言動と、体調が悪そうな顔つき。
如何にも、面倒くさそうなそんな刺々しい様相だった。
「ゴホッゴホッ……女連れでぶっ倒れんなよ……、助ける気力が削がれるだろ。ただでさえ、くそ汚染で体調最悪だってのに。余計に気分が悪くなる。……それにしても、どんな奴と戦ったらそこまでボロボロになるんだよ。……クソめんどくせーな、まったく……」
男は、愚痴をこぼしつつも、一応、助けてはくれるようだった。
灰崎と少女を脇に抱え、その場から立ち去ろうとする男。
「……こんな体でぶっ倒れて、なんでそんなに満足気な顔してんだ」
立ち去り際、男は灰崎を一瞥しそう独白した。
忘れられた世界 @sinsin1234
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。忘れられた世界の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます