第63話 エイリアンの基地に潜入!? 子供たちだけで何ができるか……!?

 基地内が騒がしくなっていた。エレベーターシャフトに続く通路から金属質な足音がカツカツと響き、獣の唸りのような声も聞こえる。

 だが俺――朱宇しゅうがいる階段室は比較的静かだった。

 ビーコンで助けを呼んだ後、VICSの兵士がわらわらと出てきて見つかりそうになったから咄嗟にハッチに戻って、ダクトやメンテナンス通路を這いずり回ってようやくここに転がり込めた。


「この反応、なんだろう……?」


 逆探知される可能性があるからバイオデバイスは使えないが、腕輪型の個人端末スマホはNOX製だから、エネルギー波を察知するセンサーが内蔵されている。その情報によると、この下の階層で強いエネルギーサインを検知していた。


 絶対危険な場所だ……でもマリーさんが来てくれているのならいい目印になるかもしれない。シャノンの居場所も分からないし、とりあえず行ってみるか……?


 こんな所にとどまっていても現状は好転しない。俺は勇気を振り絞って階段を駆け下りた。大丈夫だ。マップは分かってる。ここを出る時にマッピングしたから目的の場所場までの道は端末に入っていた。


 だから迷うことなく格納ベイがあった階まで来られたけど……ここはやけに静かだった。戦闘員が出払っているのか、ベイに輸送艇しかないからか、足音一つしない。だが注意深く通路を折れたところでばっと足をつかまれた。


「――っ!?」


 心臓が大きく跳ね、ばっと伸びてきた白い腕に思わず目を見開いて唇を震わせた。

 人間の手だ。華奢で、綺麗な細い指。そして床に近いダクトのような通路から金色の頭が出てきて――って金髪……!?


 また心臓が大きく跳ねた。今度は恐怖ではなく驚きで。


「朱宇、やっぱりお前だったか」


 シャノンだった。匍匐するように拡散級用の通路から出てきて、けろりとした顔で起き上がるその仕草を見ると、俺は思わず唇を震わせた。


「と、登場がホラーすぎるんだが……!?」

「すまない。靴音が革靴だったから警戒して見ていたんだ。そしたら制服のズボンが目に入って、それでつい」

「急につかまれる身にもなれよ。転んだらどうするんだ……」

「いやもっと他に言うことがあるだろ。何で朱宇がこんなところにいるんだ?」

「それはお互い様だけど、俺の方はこっそり輸送艇に乗り込んだから――」

「無謀……! 輪にかけて無謀な奴だな、奴らは私たちNOXが使うバイオデバイスを探知するんだぞ。見つかったらどうするんだ……!」

「バイオデバイスは使ってねぇよ。つーか、その無謀な奴のおかげで今助けが来てるんだぞ?」

「なんだと……」


 俺の言葉に桔梗色の瞳が見開かれた。その驚きの表情は一年前のまだ何もできなかった頃の自分を映しているようで、それと同時に今日まで備えてきた自分の成長も感じさせてくれた。



(次回に続く)


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