第34話 フラッシュライトを使った訓練開始!(縛られたロリにお仕置きあり!)

「おぉーワクワクするな、朱宇。次はどんなモノが見られるんだ?」

「シャノンはシャノンですっかり観戦モードだし……つーかそんなに目をキラキラさせるんじゃねぇよ。俺が今からしごかれるんだぞ?」

「もしかしたら汚名返上できるかもしれないだろ。わかったらほら、おっぱいにうつつを抜かすお前を拭い去るんだ」

「はっ!? べ、別におっぱいなんて、興味ねーし……!」

「朱宇、そんな小学生男子の典型的な反応しても、さっきのテンションの上がり方を見れば火を見るよりも明らかなんだぞ?」

「ぐぅ……! シャノンの視線が今日イチで痛いぜ……」


 困ったちゃんを見るような目が痛痒い。軽蔑こそしていないようだが、じっとりとした眼差しだ。これじゃあ何を言っても無意味だろう。完全にエロガキ認定されている。

 がっくりと肩を落とす俺をよそに、マリーさんがトラックまで歩み、そこにいた男性隊員からサブマシンガンを受け取って戻ってきた。


「朱宇くん、懐中電灯フラッシュライトを出して。チェストリグのポーチに入ってるから」

「えっと……はい」


 ジッパーを開け、脇腹辺りについていた縦長のポーチから頑丈そうな懐中電灯を取り出した。一〇センチほどの長さで、レンズの周りが少し分厚くなって強化されているタイプ。いかにも軍用って感じの代物だ。

 それをしっかりと握った俺は、手ごたえを確かめるように軽く振った。


「これってやっぱり、さっき言ってたけど、目つぶしとかに使うんですか?」

「えぇ、今回はね。まぁ普通に手元とか足元を照らす使い方のほうが一般的だけど……朱宇くん、ちょっと目に当ててみてもいい?」

「あ、はい……いいですけど――おお!? 眩し……ッ!」


 急に目の前が真っ白に染まり、何も見えなくなった。

チカチカする目をぎゅっとつぶって俺が顔をそらすと、マリーさんはライトを消した。


「ポイントは相手の眉間を意識して照射すること。いつでも相手の目をとらえて、思い通りのところに光を当てられるようにしましょうね」

「相手の眉間か……」


 俺がそう呟くと、マリーさんは自分の眉間をつんつんと突いてみせた。


「えぇ、ここよ。ちゃんと両目をつぶせるようにしないと意味ないから絶対に狙いを外しちゃダメよ。じゃあ試しに私に当ててみて」

「こ、こうですか……?」

「うぅ……ああ、そこそこ。いいわよ朱宇くん、上手上手ぅ♪」


 強烈な光に照らされて思わず目を細める銀髪北欧爆乳美人。めっちゃ笑顔だ。普通こんな滅茶苦茶眩しいライトを顔に浴びせられたら不快なはずなのに、マリーさんは嬉しそうだった。

 そのリアクションが気に入ったのか、街路樹の方でゲスなロリボイスが聞こえてきた。


「おお、まりりんがシュウくんに責められてメスの声上げてる……! ふへへっ、なんてスケベな女だ――」

「……」

「やめて眩しい……! 私、身動きできないのっ、だからイジメないでぇー……!」


 マリーさんが無言で死体袋にライトを浴びせると、街路樹に吊るされたクレアが苦しむように身体を捻った。

 光を嫌う悪霊みたいだ。いっそのことそのまま浄化されてくれ……じゃないと、こっちまで意識するだろ、メスの声とか言われたら……。

 俺は心中で密かに死体袋の悪霊が滅されるのを願いながらほっと息を吐いていつもの調子を整える。だがそこで、


「朱宇、私にも浴びせてくれ」


 シャノンが目を輝かせた。両手を胸に持ってきて、うずうずとして我慢できないご様子だ。


「いいのか? これ、相当眩しいぞ」

「むしろそれがいい。どの程度見えなくなるか楽しみだ」

「おおそうか。そんじゃ……ほれ」

「くうぅ、眩しいぞッ! 天国に行く前の景色って感じだ、これっ。まぁでも天国に行ったことないけどな……!」

「何も見えてないのに天国の景色ってのも変な話だけどな」


 懐中電灯のスイッチを切り、ぎゅっと目をつぶったシャノンを見て苦笑する。


「二人ともいい? 誰かに襲われたりするような緊急時以外は人や動物には当てちゃダメよ。それから視力が悪くなる場合もあるからあまりライトを直視しないこと」


 マリーさんから注意され、俺とシャノンは素直に頷いた。

 とはいえ、その注意をしたマリーさん自身がしこたまクレアの顔面にライトを浴びせているのだから、何とも言えない気持ちになる。

 そんな俺の心を読んだのだろう。マリーさんが虫を追い払うように手をひらひらさせた。


「でもクレアはいいの、しぶといから。このくらいじゃ全然なんともないわよ。それより次はこれを使います。M31PDW、小型軽量のサブマシンガン」


 MP7に似た見た目の銃を差し出された。コンパクトなそのサブマシンガンのグリップを握り、俺はメタリックなラインが入った側面を見て安全装置を確認した。

 ロックされてる……これからやっと射撃的な技術のレクチャーが始まるのか?

 そう思って聞いてみたが、ふるふると首を振られた。


「違うわよ。とりあえず私に向かって構えてみて」

「は、はい――ッ!?」


 言われるまま構えた瞬間、マリーさんが目にもとまらぬ速さで動き、俺の腕に軽い衝撃が走ったかと思うと立場が逆転していた。

 銃口がこちらを向いている。一息の間に距離を詰められてあっさり奪われた。そして今は、数歩下がりながらマリーさんがM31PDWを構えている。


「これは……手でも上げればいいのかな?」

「人間相手ならそれでもいいけど……VICSはそんなんじゃ許してくれないわよ」


(次回に続く)

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