第33話 北欧系銀髪巨乳お姉さんVS問題児系赤毛合法ロリ、そして「むぁ~」と叫ぶ断末魔
腕を引かれ、また路地裏にクレアが連れて行かれる。
本日二度目の光景に、俺とシャノンは二人して肩を落とした。
ここではマリーさんが、このマイペースなサイコロリをコントロールしているからいいが学校だとそうもいかない。クレアが転校してきてから刺激的な日々を送っていた。
余計なことをするし、失言も多いし、授業中は居眠りしているし、休み時間はサッカーとかドッジボールをして男子をボコって容赦ない。そのくせフォローをするのは俺たちの役目で、見た目が幼いクレアだから小学校でもシャノンを護衛できるように転校してきたのに、もうどっちが守られているのか分からないくらいだ。
「あ、そうだ。クレアにも格闘戦の訓練してあげるわね……」
「え、やだ。私、狙撃手兼観測射撃専門の超遠距離担当だから徒手格闘はちょっと――」
「いいから。いいから、ほら構えなさい」
華奢な腕を離すと、マリーさんが両手を突き出し、徒手格闘の構えをとった。それを見た瞬間、クレアは踵を返して一目散に駆けだす。
「ひぃー……!」
「ちょっと逃げないで止まりなさい。いい子だから、クレアもやりましょうねー」
「やばい逃げ切れないッ! こうなったらクレア
「ふふふ……っ」
クレアが振り向きざまに投げた手榴弾らしきものはあっさり弾かれ、赤毛の頭に手が添えられた。まるでこっちを向けと言わんばかりに側頭部を両手で挟んだマリーさんの手がぎゅっと耳をつかむと、クレアをねじ伏せた。
「むぁ~……!」
そして流れるように綺麗な袈裟固めを極められたクレアがもがもがする数メートル後方で、さっきの手榴弾が爆発する。ピカッと光ったから非殺傷の閃光手榴弾のようだ。その光が勝敗を決める合図のようでちょっと笑えてくる。首に回された腕が食い込むよりもマリーさんの胸に半分だけ口を塞がれてもがいているのもグッドだ。面白い。
悪ガキが懲らしめられているようで妙にスカッとする。
隣からくすりと笑う声。見ると、シャノンも似たようなことを思っていたのか微笑んでいた。桔梗色の瞳と目が合う。
「「――ふふ、あっはははははははははは!」」
青空の下、クレアのもがもが声に混じって俺とシャノンの笑い声が響いた。
「じゃあ今度は、さっきの反省を踏まえつつ戦術的なレクチャーをします」
俺たちがひとしきり笑った後、マリーさんが涼しい顔で戻ってきた。
ちなみにクレアはまた死体袋に詰められ、大通りの街路樹にロープで吊るされていた。顔だけ出してこちらを見守るその姿はミノムシに近い生き物だ。
「朱宇くん、前に来て」
「えー、まだやるんですか? 俺、もうぶっ飛ばされたくないんですけど……」
「そう。だからさっきみたいにならないための技術をマスターしなきゃならいの」
きりっと眉を寄せ、形の良い唇を引き締めるマリーさん。その断固たる態度に気圧されながらも俺は、恐る恐る手を上げた。
「あの、いまさらですけど……やっぱり銃の方がいいです。だって絶対その方がちゃんと戦えるし」
「うん、そうよね。じゃあ銃も使いましょうか」
え? 銃もって……ヤダこの人、意地でも近接戦する気だ……! じゃあ銃も使いましょうかって優しく言ってるのが逆に怖ぇーよ。俺、この後マリーさんに何されるの……。
(次回に続く)
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