第8話 どうあがいても絶望
相続を断った場合、謎の犯罪組織「
「
だが、それだけの活動資金を得たら、何をしでかすか。
もはや、この国の命運は、俺に掛かっていると言っても過言ではない。
もしかすると、相続することによって、「
「お前が辞退さえすれば、全て我らのものだったのにっ!」とか何とか、逆恨みされるかもしれない。
相続しても地獄。
しなくても地獄。
どうあがいても、絶望。
なんだかだんだん、頭が痛くなってきた。
「大丈夫ですか? お顔の色が優れませんが……」
心配そうな顔の桜庭に顔を覗き込まれて、俺は考えを中断させられた。
だから、顔が近いって。
なんで、そんなに顔を近付ける必要があんの?
ミッチェルに、そうするように言われてたの?
全裸だし。
もう疲れた。
ぐったり仰向けに横たわり、目を閉じる。
「……急に色々ありすぎて、ちょっと頭痛が……」
「頭痛っ? すぐにも医者を――」
慌てふためく桜庭の腕を、俺はすかさず掴んで止める。
「大丈夫! 医者呼ぶほど、大げさなもんじゃないですからっ!」
「ですが……っ!」
「寝てりゃ治りますから、そっとしといて下さいっ」
俺が必死に訴えると、桜庭は渋々と答える。
「分かりました。では、少しでも何かありましたら、すぐおっしゃって下さい」
「はい、そうします」
そう答えると、桜庭は安心したようににっこりと綺麗に笑った。
ややあって、加藤先生が事務的に話し掛けてくる。
「川崎さんの体調がよろしくないようですので、今日のところはこれで失礼致します。それでは」
「では、私と
「はい、橘さん」
声を掛けられた桔梗が、橘の後に続いた。
「桜庭君達は、ご主人様のお側に。なるべく、すぐ戻る」
「はい、かしこまりました」
ベッドルームに残った三人の執事達に、橘は簡単に告げて部屋を出て行った。
加藤先生が立ち去ると、張り詰めていた空気が緩んだ気がした。
その後すぐ、安堵したのと柔らかなベッドの誘惑に負けて、眠ってしまった。
その日の夜。
ムキムキマッチョな全裸の男達に、「おしくらまんじゅう」される悪夢を見た。
しかも何故か、四方八方から複数の
あまりにヒドイ悪夢に、もがいて悲鳴を上げる。
「ぎゃぁあああっ! 熱いっ! キモいっ! むさ苦しいっ! ってか、何この状況っ? 色んな意味で怖いっ!」
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