第23話 中間テストの結末

 試験は二日だけで、1日を挟んで週末を迎える。

 今年は、29日、30日が土日になるので、サッカーの試合を見に行くのが楽しみだ。

 もしもテストの成績が悪くても、チナちゃんの試合を見に行くつもりでいる。


「さて、結果が出たようね」


 僕の横では戦いを終えたヒメさんが、チラチラとこちらを見ながらかっこいいセリフを言っている。


「そうだね。どうする? 二人とも同時に出して見せ合う?」

「そうね。お願いするわ」


 ボクは今回の勝負に自信を持っていた。

 国語はボクの得意分野で、相原さんに教てあげる時間もなかったから復習もできた。


「それじゃ」


 ボクは国語の答案を見せた。

 ヒメさんも同時に机にテストを出すと、二人とも得点は満点だった。


「あら、自信があったのに、結局決着は付かなかったわね」

「うん。でもお互い満点は凄いね」

「ふふ、勉強は得意なの」

「そうだね。う〜ん、罰ゲームは無しだけど、もしよかったら一日一緒に遊ばない?」

「いいのかしら?」

「うん。誘ってくれたのは嬉しかったから」

「なら、お願いするわ。本当は勝って、命令を聞いて欲しかったけれど」

「何をやらせたかったのか気になるね。でも、なんだか怖いから、今は聞かないでおくよ」


 本気で残念そうにガッカリした顔をしているので、遊ぶ約束を取り付けられてよかった。

 最近は、相原さんと話せていないからか、相原さんのことを考える時間が少し減っているように思える。


 本も読んでいるけど、朝は早くに起きて、洗顔や体重管理の体調を整えて家を出る。

 公園に言って軽く筋トレをしてからスケボーをする。

 そのまま学校に行って授業を受けて、放課後は図書室で一冊本を借りて家で読む。

 最近はこの流れが習慣化してきた。

 

 学校では、ヒメさんとシュウトが話しかけてくれて、たまにチナちゃんと会う。

 クラスが分かれるだけで、こんなにも相原さんと会う機会が減るんだって痛感する。


「ねぇ、レン君」

「えっ? うん。何?」

「先ほどの話だけど、3日に時間をいただけるかしら?」

「3日だね。うん。大丈夫だよ」

「それと、私が行きたいところに行きたいのだけど、いいかしら?」

「うん。全然いいよ。どこに行くの?」

「ふふ、それは秘密よ。当日の待ち合わせまではね」


 ヒメさんがすごく楽しそうに笑っているので、全部任せるつもりだ。


「それじゃ楽しみにしているね」

「ええ、絶対に後悔はさせないわ」


 自信満々で笑っている姿も綺麗だね。


「ねぇ、レン君は本が好きよね?」

「えっ? うん。好きだよ」

「ふふ、なら絶対に楽しませて見せるわ」


 本にまつわるところに連れて行ってくれるのかな?

 最近わかったことだけど、ヒメさんは結構顔に出るタイプだ。

 嬉しい時は笑顔になるし、悪巧み? をしているときは悪い顔をする。

 ただ、悪巧みというか、イタズラを考えているようで可愛かったりする。


 相沢さん以外の女性なら冷静に見て判断ができるんだけど、どうして相沢さんの気持ちはわからないんだろう。


「あっ! 先輩! 見てください!」


 放課後に帰ろうとした校門前で、チナちゃんに呼び止められた。テストの答案を見せるためだ。


「えっ? 80点、凄い!」

「へへ、どうせなら先輩にいい点をとって褒めて欲しいって思ったんです」

「本当に凄いね。ちゃんと勉強も頑張ってるんだ」


 素直に喜ぶ姿は可愛くて、つい手を伸ばして頭を撫でてしまう。


「あっ! こっこれで、約束守ってくれますよね?」


 チナちゃんは一瞬戸惑ったけど、僕の手を受け入れてくれた。

 僕も出した手を引っ込めるわけにもいかなくて撫で続ける。


「うん。週末は必ず応援に行くよ」

「絶対ですよ。私、レン先輩が来るから絶対頑張りますから」

「ああ、約束だからね。絶対に行くよ」


 チナちゃんが僕から一歩距離をとる。

 頭を撫でるのをやめて、僕も冷静になって辺りを見れば周りから視線を浴びていた。


「レン先輩って無意識タラシだと思います」

「えっ?」

「失礼します」


 チナちゃんは顔を赤くして、走り去ってしまった。

 

 僕が唖然としていると、後ろからシュウトに背中を叩かれた。


「おいおい、どういうことだ? 相沢さんのことが好きだったんじゃないのか?」

「あっ、いや、冬休みに前に出会って仲良くなった後輩なんだ」

「ただの後輩に頭を撫でるか? 女は嫌いな男に頭なんて触らせないぞ」

「う〜ん、慕ってくれているだけだと思うよ。相原さんを好きなことは伝えてあるから」

「ふ〜ん、レンも罪なことをするようになったんだな」

「えっ?」


 コイちゃんは夜まで友達と過ごすそうだ。

 シュウトとは夜に合流するそうで、暇なシュウトは僕を追いかけてきたらしい。


「ちょっと来いよ。最近のレンは面白いからな。周りの状況を聞かせろよ」

「何をだよ。話すことなんてないぞ!」

「バカやろ。今時、無自覚鈍感主人公なんて流行らねぇぞ。むしろ、どんどん自覚して女を落とせるぐらいにならないとな」

「だから、さっきからなんの話だよ」


 僕はシュウトに強制連行されて、ファミレスでここ半年の出来事を話させられた。


 そして、ゴールデンウィークに入ってきた予定の過ごし方も。


「お前さ。ヤベーぐらいモテ期来てね?」

「そうかな? 自分じゃ実感がないけど」

「絶対来てるって、黒鬼さんだけかと思ってたけど、後輩女子に、従姉弟のお姉さんもかよ」

「ツバキ姉さんは指導してくれているだけだぞ」

「それがキスなんてするかよ」

「うっ」


 僕が話し内容を聞いてシュウトが近づいて囁く。


「いいか、誰と付き合うにしろ。別れるにしろ。キッチリと関係を精算してから次にいけよ。被ったりして、浮気はダメだぞ」

「わっ、わかってるよ。てか、僕が好きなのは相原さんで、二人は友達だぞ」

「はいはい。そういうことにしといてやるよ。とりあえず、週末は小金井さんだっけ? 彼女とデートだろ? 頑張れよ」

「デートじゃないし、練習後に一緒の食事に行くだけだぞ」

「そう思ってるのはお前だけかもな」

 

 シュウトに変なことを言われて、僕も変に意識してしまう。


 あの可愛いチナちゃんが僕を好き?

 それなら嬉しいけど、あり得るのかな?


 それにヒメさんも僕を好き?

 うーん、ヒメさんが綺麗すぎて、僕と釣り合いが取れてなさすぎる。


「レンはもっと自信を持つことだな」

「それはツバキ姉さんにも同じことを言われたけど」

「おう、だから来週は俺にも一日付き合え」

「えっ?」

「たまには男同士で遊ぼうぜ」

「まっまぁそれはいいけど」

「よし。決まりな。それじゃ来週」


 来週は本格的なゴーデンウィークに入る。

 どんどん予定が埋まっていくのに、相原さんとの予定は何もない。


 これで本当にいいのかな?

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