第15話






 ラルルラータ町までの道のりは片道2日くらいだ。


 でも、ミコトがどのくらい体力があるのかわからないから、2日でラルルラータ町まで着くかは不明だ。


 ミコト、ずっとどこかに閉じ込められていたみたいだし、運動能力皆無なんじゃないだろうか。


 そんな懸念が脳裏に浮かぶ。


「あ、あと服をまずどうにかしないと、怪しまれるわねぇ……。流石に。私はいいけど、ミコトちゃんの服がないわ。」


「あ、確かに。」


 ロレインちゃんは火事にあった当日に来ていた服が無事だったので、洗濯すれば問題ないだろう。僕の服だって毎日選択しているから問題ない。


 問題があるのは、ミコトの服だ。


 今は僕の服を着ている。幸い背丈が同じだから、問題はないんだけど。女の子が男の子の服を来て町を歩いているというのはかなり目立つと思う。


 もしかしたら誰かに怪しまれるかもしれない……。


「……服?シヴァの服、似合わない?ダメ?」


「……ミコトは女の子だからね。僕の服を着ていたら町ではちょっと目立っちゃうんだ。かといって、ミコトがここに来た時に着ていた服も、かなり上質な生地で出来た服だったから目立っちゃうよなぁ。」


 ミコトがここに来た時の服ならデザイン的には問題はない。デザインはごくごく普通のシンプルな白いワンピースだから問題はないのだ。だが、ワンピースの生地に問題があった。肌触りがとても良い上質な生地で作られていたのだ。


 貴族や王族が着ているような上質な生地だってじいちゃんが言ってた。そんな服を着ていたらやっぱりミコトはとても目立つだろう。それどころか、金銭目的で誘拐されかねない。


「……仕方ないわね。ミコトちゃん、今回だけ、男の子にならない?」


「え?」


「???」


 ロレインちゃんの提案に僕とミコトの頭に疑問符が浮かぶ。


 ミコトが、男の子になる?どうやって??


 まさか、ミコトの魔法でってこと?


 いや、でも魔法で性別を変えることは可能なのだろうか。なんか、ものすごく禁忌な気がするんだけれども。


「そんなに驚かないで。今回だけよ。シヴァルツくんの服を借りて、男の子に変装しましょう。シヴァルツくん、帽子はあるかしら?帽子があれば、ミコトちゃんの髪を帽子の中に隠してしまえば、髪の長さを誤魔化すことができるわ。髪が短ければ、ミコトちゃんのことは皆綺麗な男の子だと思うでしょう。」


 僕はミコトの男装姿を想像する。確かに、線の細い美少年になりそうだ。別の意味で目立つかもしんない。


 まあ、それは容姿が整っているから仕方のないことだけれども。


 そんなこんなで、ミコトは半ばロレインちゃんに押し切られるように男装することが決まった。ロレインちゃんが乗り気なのだ。僕じゃあロレインちゃんの考えを覆すことはできない。


 それに、ミコトが男装する以外の良い案が僕には浮かばなかった脚。


 でも、ミコトが女の子だって、バレないかとても不安だ。だって、ミコトはとても可愛いもの。


 ちなみにミコトの出来上がりは完璧だった。


 ロレインちゃんには拍手を送りたいくらいだ。


 ミコトの表情もあいまってどこか謎めいた色気を持つ謎めいた少年が出来上がった。肌が白く、線が細いので病弱にも見える。


 もう、これはアルフレドと名付けるしかないだろう。


 ミコトが女の子だって思う人もまずいないんじゃないかな。


「ミコト、男装しているときにミコトって名前を呼ぶのはおかしいだろうから、男装しているときはアルフレドって呼ぶね。」


「そうね。確かに、男装しているときにミコトちゃんと呼ぶのはおかしいわね。とても良い名前ね。アルフレドって。」


「ミコト、アルフレド。アルフレド、ミコト。」


 僕の意見にロレインちゃんもミコトも満足してくれたようだ。


 これから男装している時のミコトはアルフレドと呼ぶことになった。


「そうと決まれば早めに行きましょう。でも、道中どうしても野宿になるわよねぇ。ラルルラータ町まで行く間に町なんてないし。護衛がいないのはちょっと心配かしら。」


「そうだね。でも、護衛を雇うにしても、ラルルラータ町まで行かないと雇えないし……。」


「そうなのよねぇ。それに、護衛を雇うだけのお金もないし。気をつけてラルルラータ町まで行くしかないわねぇ。」


「ミコト、大丈夫。シヴァ、守る。」


 町から外れると魔物がいるから3人だけの移動はとても心配ではある。だが、心配だからと言って、ずっとじいちゃんの家にいるわけにはいかない。だって、もう食料が心伴いのだから。


 僕たちが生き残るためには、逃げ隠れているだけじゃダメなんだ。


「僕だって、ミコトとロレインちゃんを守るよ。こう見てもじいちゃんから護身術は教わっているんだ。」


「そう。頼もしいわね。私も微力ながら火の魔法だけは使えるの。生活に少し役立つってだけの力だけれども、火を恐れる魔物も多いと聞くわ。夜、火を焚いておくだけでも魔物避けになるかもしれない。力を合わせて窮地を切り抜けましょう。」





◇◇◇◇◇


「サンプル001がいないだとっ!?」


「サンプル001は逃げ出した。」


「なぜだ!?サンプル001には逃げ出すような感情は与えていなかったはずだ!」


「感情のないはずのサンプル001が逃げ出すはずがない。」


「誰かがサンプル001を連れ出したんだ。」


「探せ。探せ。探せ。」


「探せ。探せ。探せ。サンプル001は我らの希望だ。なんとしてでも探し出せ。」


◇◇◇◇◇





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