第7話 番外編 わたしの世界
番外 わたしの世界
◇◇◇◇◇
どこまでも真っ白な世界。
私がいた場所。
そして、私のいるべき場所。
私の帰るべき場場所。
壁も天井も真っ白。
外を見るための窓もない。
部屋の外へ出るためのドアも真っ白。
ドアにはいつも鍵がかかっていて、私は部屋から外にでたことは一度もない。
どのくらいの年月そこにいたのかわからない。
一人じゃない時もあった。
でも、一人の時もあった。
会話は最低限。挨拶はしない。
私と同じ人、何人もいた。
見た目も一緒。声も一緒。
違うのは部屋の中にいた年月。
私が一番長く部屋にいた。
一番最初から一人になるまで部屋にいた。
何人いたのかは興味がなかったので数えてはいない。でも、3人以上はいたと思う。
私たちはそれぞれ番号で呼ばれてた。
私は、サンプル001。
なぜ、私がそこにいたのかはわからない。
ただ、そこにいた。
そこでなにをしていた?
何もしていなかったと思う。
ただ漠然とそこにいただけ。
なにもせず、その場所にいることを強要されていただけ。
……違う。
私たちはその場所から出ようとは思わなかった。
なぜって?
そう作られたから。
誰に作られたかって?
わからない。知らない。
そんな会話はなかったから。
ただ毎日のように血を抜かれ、検査をされた。
脈をみられ、血圧を測られた。
視力を確認された。
聴力を確認された。
それが毎日続いた。
……毎日?
毎日だったのかもわからない。
だって、時を計る道具もなにもなかったから。
もしかしたら数日に一回だったのかもしれない。
もしかしたら一日に何回もだったのかもしれない。
夢も希望もない世界。
人格さえ不要な世界。
ただただ生かされているだけの世界。
それが私の知っていた世界。
でも、そこにあの人が来た。
それは私があの部屋に一人だけになったときだった。
あの人は私に少しずつ言葉を教えてくれた。
あの人が私に名前をくれた。
あの人だけが私を番号で呼ばなかった。
でも、私はあの人の名前を知らない。興味がなかったから。
そんな日々がどれくらい続いたのかはわからない。
数日だったのか、数ヶ月だったのか、数年だったのか。
そんな日々は、ある日あの人の手によって一変した。
ここに居てはいけないと、あの場所から連れ出されたからだ。
でも、私はいつかあの場所に帰らなければならない。
あの場所こそが私の存在理由そのものだから。
何があっても、あの場所に帰らなければならない。
なぜならば、私はそう作られたから。
私は、そう作られたから。
◇◇◇◇◇
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