煌めく空を追いかけて

鞠ちゃん

煌めく空を追いかけて

ひまり:女

観測者:男

太陽:男

星 :女



本文

ひまり「う〜ん、今日は気分乗らないし屋上でサボろうかなぁ〜!」

ひまり(なんて、いつものことだけどね〜)

ひまり「って、屋上の鍵が空いてる...?いっつも閉まってるのに...」

ひまり「あ、やっぱり先客いるかぁ。ね、私もここ使っても良い?」

観「え...?僕に言ってる?」

ひまり「あなた以外いないじゃない。おかしな人。で、つかってもいい?」

観「そっか...僕以外いない、か。あぁ、使って良いよ。って言っても僕はここの所有者でもなんでもないから許可なんてとらなくて良いのに。」

ひまり「それは気持ちの問題よ!まぁ、それなら遠慮なくつかわせてもらうね。」



ひまり「・・・ねぇ、ちょっと話し相手になってくれない?」

観「...ん、ああ。いいよ。」

ひまり「(まずい、誘ったは良いけどなんも考えてなかった...)

えっと、えーっと、.....ご趣味は?」

観「ぷ、あっはは!君、おもしろいね!そんなお見合いの定番から入るなんて!あっははは!」

ひまり「そ、そんなにわらわなくたっていいじゃん!もう!」


〜〜〜〜〜〜〜


ひまり「あ、やっば、そろそろ戻んなきゃ。」

ひまり「ねぇ、最後に、あなたの名前おしえてくれる?」

観「僕?僕の名前、か。気になるなら、今日の夜、星が綺麗な時間にここにまたおいで」

観「じゃあ、僕もそろそろ行かなくちゃだから。またね」

ひまり「星が綺麗な時間、って。大雑把だなぁ。って、教室行かないと怒られちゃう、やば!」


〜〜〜〜〜〜〜


観「ん、あぁ、きたんだね」

ひまり「いや、あそこまで言われて気にならない人はいないでしょ...」

観「そうかい?

  ...まぁ、それはそれとして。ほら、これを覗いて見てごらん」

ひまり「唐突だね...。望遠鏡?どれどれー?.....んんっ?!」

観「あはは。びっくりしたかい?その望遠鏡は特別性でね。星だけじゃなく、星に関わる人々までみえるんだ。」

ひまり「なに、これ...すごい...!星と関わる人も見えるなんて...!すごい...魔法みたい!」

観「すごいだろ?その望遠鏡。」

ひまり「すごい...!すごいきれい!」

観「...星の数だけ物語があるんだ。今日は特別に、その中から僕が特に気に入ってる話をしようかと思うんだけど、どうかな?」

ひまり「え!いいの?聞かせてくれるの?」

観「あはははは!そんなに食いつかれるのとは思わなかったな。じゃあ、話そうか。これはある星と人間の愛の物語。」


〜〜〜〜〜〜〜


観「その星は、長い間ずっと一人だった。何千、何万年もずっと見つからず、一人でいた。」

星「あぁ、わたしは、このまま誰にも見つからずにくちてゆくのか...」

観「長い間、星は一人悲しんでいた。そんなある時、一人の人間が星を見つけ出した。」

太「え、あの星は!...やっぱりどこにも乗ってないし書いてない!俺の、俺が見つけた新しい星だ!」

観「その人間は星を見つけたことを大層喜んだ。そして、星はついに見つけられ、見つけて喜んでいる人間を見てさらに喜んだ。そう、星にとってその人間はまさに太陽だった。」

星「あぁ、あぁ!やっと見つけてくれた!私を見つけてくれてありがとう!私の愛しい発見者たいよう様!」

太「やった、やったぞ!ついに念願の夢が叶った!あぁ、この歳にしてようやく、ようやく...!ありがとう!俺の愛しいお星様!」

観「それから、星は人間に、人間は星に、毎日欠かさず話しかけていた。すごいよね、星の声は人間には届かないのに、星の声は人間には聞こえていないのに。毎日、本当に毎日欠かさず...」

観「でも、そんな穏やかな日々も終わりをつげる。人間の寿命が迫って来たんだ。」

太「俺のお星様...俺はもうすぐ命尽きてしまう...。お医者様にはわがままを言ってしまった、お前が見えるところで、死にたいと。お医者様はたいそう困っていたけれど、最後には許可を出してくださった。」

星「そんなに…私を…大事にしてくれていたんですね…。ずっと、私だけだと、あなたにとってはただの星だと、思っていました。だから、そんなに私を思っていてくれていたのがわかって、とっても嬉しいです...!」

太「目が、霞んできた。あぁ...こんな視界でも、お前は綺麗だなぁ…

願わくば、来世もお前がいる世界に、生まれたい」

星「えぇ、またあなたに会えるのを、楽しみにしています。」

観「人間の命が尽きる、まさにそのとき、きせきがおこったんだ!」

星「おやすみなさい。私の、愛しい発見者さん」

太陽「っ!あぁ、おやすみ。俺の、愛しいお星様」

観「そう、本来聴こえるはずのない、通じるはずのない星の声が!人間に聞こえたんだ!こんなこと、おきるはずがなくて、あるはずがないんだ!でも、それでも星の声は人間に届いた!まさに奇跡なんだ!」


〜〜〜〜〜〜〜


観「どうだい?この話、きにいってくれたかい?」

ひまり「すごい!すごい素敵!なんてロマンチックなの!」

観「あはは!気に入ってくれたのならよかった!僕も、いろんな物語を見てきたよ。でも、このお話が、一番好きなんだ!」

ひまり「(私は、その笑顔に目を奪われた。儚く、今にも消えてしまいそうで、つい、抱きしめてしまった)」

観「...?!わ、わぁ?!いきなりどうした...の...え、な、なんで泣いてるんだい?!」

ひまり「無理に、わらわないでよ...。」

観「あ、はは。初めて言われたな...その言葉。」

観「...ねぇ。僕はね、人間じゃ、ないんだ。本当だったら誰にも見えないはずなんだけど、なぜか、君は僕が見えている。」

ひまり「...うん。何となく、人間じゃないのはわかってた。...それで?」

観「だから、君が僕のことを見て、僕の話を聞いてくれて、とっても嬉しかったんだ。でも、それが何を意味しているかを知ってからは、怖くなった。それでも、君と話したいと、思ってしまったんだ...。」

ひまり「・・・何を、意味しているの?」

観「(曖昧に笑う)ごめんね、君は、ただ巻き込まれただけ。だから、今日のことはわすれて、明日から普通の日常にもどるんだ。もう、ここには来ないほうがいい。...さよなら」

ひまり「(そう言って、観測者さんは夜空に消えていった。家に帰った覚えはないのに、気が付くと自分の部屋のベットの上だった。)」


〜〜〜〜〜〜〜


ひまり「(私は、それからどうしても観測者さんのことが忘れられなくて、一週間後の夜、星が綺麗に見える日に、また屋上へきてしまった)」

ひまり「いる、かな...観測者さん?」

観「...来ちゃったんだね...。来ないほうがいいって、いったのに」

ひまり「しょ、しょうがないじゃん!あんな気になる言い方されたら!」

観「あはは!...じゃあ、しょうがないから、教えてあげるよ。君が、なんで僕が見えるのか」

観「君はね、観測者になれる資格があるんだ...。観測者っていうのはね、何年も、何千年も、星と、星に関わる生き物のことを観測して、記録するもののことなんだ。僕も、もともとは人間だった...。星が好きな、ただの人間。観測者になると、自分が関わってきた全ての人間に忘れられるんだ。愛されていた記憶があったから、それが一番辛かったかなぁ。」

ひまり「観測者...何千年も...親にも忘れられて?」

観「あはは。いきなりいわれても、信じれないよね。でも、それでいいんだよ。君は、観測者になるべきじゃないんだ...」

ひまり「!信じてないわけじゃ!....ううん、まだ、信じきれないけど、でも....でも!あなたが嘘をつくとは思えない。だから嘘じゃないのはわかる...」

観「...やさしいね。君は」

ひまり「陽葵(ひまり)」

観「え?」

ひまり「だから、君じゃなくて陽葵(ひまり)!そうよんで。」

観「...うん。陽葵。」

ひまり「それで、私は観測者になる資格があるってことだよね?」

観「う、うん。そう...だよ...」

ひまり「私、なるよ。観測者。」

観「え!?ほ、本当に!?観測者になると、君の存在は無かったことになって、親にも忘れられてしまうんだよ!?」

ひまり「え、親も諦めないよ?」

観「?!ど、どういうことだい?」

ひまり「なにも、今すぐならなくちゃいけないわけじゃないでしょ?」

観「そ、うだね?」

ひまり「だから私は、ある程度人生を謳歌してから、観測者になる!」

観「え、えぇ〜!?僕の心配...、まぁでもたしかに、それならいいかも....!」

ひまり「でしょ!わたしあったまいい〜!」

観「あはははは!やっぱり君は、おもしろいね!僕には、そんなこと、おもいつかなかった...」

ひまり「そうだ!あなたの、本当の名前を教えて?観測者はいわばただの役職名でしょ?」

観「ま、まああるけど...。うぅん、どうしよう...」

ひまり「ね!おねがい!」

観「もぉ〜しょうがないなぁ。僕の名前はね?...」


観「星が無くならないように、それを観測する者もいなくならない」

ひまり「煌めく空(きみ)を追いかけて、どこまでも」


~end~

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