私の世界
あー終わったんだ
スマホのメッセージを眺めて、相反する感情が溢れて涙を邪魔した。
大丈夫
これで良い。
そう思うのに、距離感が分からない。
連絡全て断てばいい。
優しい彼は「心配だから」と私が生を諦めないように連絡できるチャンスを与えてくれた。
付き合ってる時にもっと曝け出せば良かった?
でも私は一度出せば際限なく「会いたい」「せめて声が聴きたい」と望んでしまう。
お互い無理な事は分かってる。
私も彼もお互い、譲れないものがあるから。
ましてや彼は更に高みをと頑張っている。それを私は心から尊敬していて、心酔しているんだもの理解していた。
なんて別れを告げた言い訳を述べた所で、自分可愛さに見えてしまうね。
俯瞰してみても、みっともないなと嗤うしかない。
馬鹿だね
スマホの画面を眺めて、思考が落ち着いてきた。
結局、頑張っている優しい彼を傷付けた現実は変わらないのに。
彼との写真をみなくても、浮かんでくる。
彼の想いも優しさもどんなに大変だったのか、当時よりも今の方が、忙しい彼の優しい努力が傷みとして心に深く刻まれていった。
ごめんなさい
縋るように泣いた。
彼との思い出が、笑顔が、もう失くしたものだと、別れてからの何気ないやり取りで痛感した。
どれだけ彼を傷付けただろう
誤ってしまった言葉を、謝りたい。
こんなに好きで愛おしいのに。
私は自分の身体がコントロール効かなくなって、色んなことが出来なくなって、生きる事を諦めた。
まだ死ねないのに。彼の手を先に放した。
あとは荒んでいく私を見せたくなくて、手放した。
酷いよね、ごめんなさい。
彼に言ってはいけないから、誰に言うでもなく書き連ねている。
彼は赦してくれたけど、彼に闘病の辛さや彼の身体が心配で、お互いメッセージする癖が抜けない。
馬鹿だよね
メッセージみるだけで、私に許されていた彼の表情が浮かんでは消えていった。
心配してくれているのが申し訳ない。何の為に別れを告げたのか分からない。
メッセージを断つという決断できなくて、でもこれ以上みっともない所を見せたくなくて
彼の優しさに、何処までも甘えている私は独り嗤った。
彼を傷付けた
これが現実。
彼を手放した
これが現実。
彼を愛している
涙が祈るように握り締めた手に、ポタポタと落ちていった。
どうして
何度も何度も思考がエラーを起こす。
彼と過ごせた幸せな時間
悪化した現実の闘病の時間
同じ時の流れなのに、どれもが私の希死念慮を加速させる。
やっとこの身体でも好きな仕事がまた叶うと思ったのに、倒れてしまった現実に打ちひしがれた。
また一つ私の手から零れ落ちた。
失くすくらいなら、自分の手で。そう思ったのに、やってしまった後の後悔を懺悔のよう書き連ねる日々。
病床から見上げる空は泣いていた。
私の視界と合わさって、酷い世界だ。
あんなにも輝いていた世界が、
もう既に遠い。
彼や皆んなが見てくれていると思ったから、駆け抜けた。
愛おしい世界には、常に眩い光が満ちていた。
この身体で諦めた夢は、一つや三つではない。
駆け抜けている時も、患った身体は悲鳴をあげて、何度も立ち止まって「どうして」と泣いていた。
その度に彼が側にいて、言葉を生きる希望を与えてくれた。
そんな彼を、
私は傷付けたんだ。
言葉にすればする程に、酷い世界に拍車がかかる。
馬鹿みたい
馬鹿だね
会いたいと願ってはいけないのに、また彼の温もりに包まれたなら、そのまま死にたいと祈るように思ってしまった。
胸が痛いの
息が苦しい
行かないで
相反する感情に目を閉じて、私は彼の名前をそっとスライドして、私の酷い世界から消した。
彼の迷惑になりませんように。
さようなら
行ってくるね
まだ言えない言葉だけど、その時がきたら 私は彼や大切な人達を想って逝こう。
せめて彼には知られないように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます