第20話 カイザさんと修業、なのだ!

今までなんだかんだ生活できてきたが、これから俺たちは強くならないといけない。この先生きていくためにも、守っていくためにも。



ということで今日はカイザさんに会いに来た。


「それで、わしに新しい魔法を教えてほしいと?」


「はい!この通り魔石もあるんでお願いします!」


キルトスの館の地下にあった魔石をすべて差し出す。


「ほう、それじゃわしの弟子になるということだな」


「…え?」


「そこまで言われちゃしょうがないな」


「別にそこまでは言ってないですけど…」


「前にも言ったが魔法の習得には時間がかかる。しばらくの間はわしのところで寝泊まりしてもらうぞ」


「…はい、よろしくお願いします」


思わぬ方向に話が進んでいったけど、まあいいか。俺たちはカイザさんの弟子として修業してもらえるようになった。




「ほんとにいいんですか?」


「ああ、何をするにしても今の実力を知らなければ始まらない。殺すつもりで来なさい」


そこまで言うんならやってみるか。俺は短剣に魔力を流し始める。そして斬撃を数発放った。もちろんそんな技が通用するわけがなく、持っていた杖で簡単に弾かれてしまった。


次に斬撃を飛ばしながら走って近づき、魔力をためて思い切り突く。だがそれも杖で受け止められてしまった。


たかが杖にこんなにあっさりガードされるとは。


「なかなか使いこなせているようだな」


杖で俺の剣を弾き杖の先をお腹に当てる。その瞬間、衝撃波で後ろに飛ばされた。


「ふむ、それで終わりか?」


これだけやっても傷一つもつかないのか。これ以上できることはないしギブアップだな。


「ではマルリル、来なさい」


「おおー!吾輩の力を思い知るのだ!シャドウボール!」


マルはもちろんシャドウボールを打ち出した。それに対し、カイザさんも同じようにシャドウボールを打ち出した。


同じ魔法だけど、カイザさんが押している。どんどん押されていき、マルに直撃した。


「さすが魔族といったところだが、それだけでは勝てないぞ」


「やっぱり気づいていたんですね」


「そりゃああんな魔力を漂わせて歩いていたらな。まあ気づける奴はこの街にはほとんどいないだろうがな。わしの弟子になったんだ、隠し事はなしだ」


カイザさんの腕試しは赤子の手をひねるようにあっさり終わった。それだけ俺たちと実力の差があるってことだ。


「さて、実力もわかったところで本題に入ろうか。まず、魔力を様々なものに変化させることができる。例えば炎や氷といったものだな」


カイザさんは左右の手に一つずつ炎の玉と氷の玉を作って見せた。


「炎は魔力で熱を出す、氷は魔力で熱を吸い取る感じだ。試しにやってみなさい」


言われた通りにやってみる。なかなかうまくいかないな。


「おおー!できたのだ!」


…え?


隣を見てみるとマルが炎の玉を持って喜んでいた。


「よくそんな簡単にできたな」


「魔族は魔力の扱いに長けているからな。普通ならできなくて当然だ。慌てず練習すればいい」


気を取り直してもう一度集中する。熱を出す感じ…


「前にも言ったが、大切なのはイメージだ。強いイメージを持つことで魔力を操ることができる」


イメージ…熱を出すイメージ…


かろうじて手のひらから豆サイズの火の玉ができた。


「できたっ!」


「呑み込みが早いな。そんな感じだ」


できたけど集中するので精いっぱいだ。


「イメージをつかみやすいように技名を言ったり詠唱したりするんだ。慣れてくると無詠唱で技を出すことができるようになる」


なるほど、マルが毎回技名をさけんでいるのはそういう…いや、毎回は叫んでないな。


「マルが技名を言っているのはなんなんだ?シャドウボールを出すとき毎回言ってるわけじゃないよな」


「技名を言わなくても出せるのだ。吾輩は言った方が気持ちいいから言ってるだけなのだ」


「無詠唱の方は即出せるし、技名を言った方はイメージをつかみやすくて強い攻撃ができる。その場で使い分けるのがいいだろう。


次は周りの魔力についてだ。周りにある草や水、岩などにも魔力がある。それらを感じ取って自在に操ることができる」


カイザさんは両手を広げる。すると地面から水が出てきてカイザさんのところに集まる。


「こんな風に魔力のあるものを感じ取って操れる。だがこれは魔力を感じることができる奴しかできない。そんな奴はめったにいないがな」


「それならユウができるのだ」


「そういえばそうだな、前に魔力で開くドアを開けたりできたし、もしかしたらできるかも」


「なんだと⁉」


意識を集中させて水の魔力を感じ取ってみる。


「…ダメだ、わからないな。人の魔力だったら感じやすいんだけどな」


「…ふぉふぉふぉ、自然の魔力とは勝手が違うからな。だがそこまでできるのであれば鍛えがいがある。さあ、今日はここまでにしよう」


今日の練習でもかなり体力を使ってしたようだ。かなりの疲労感を感じる。早く使いこなせるようにならないと。

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