第21話 山の中の出会い、なのだ!

今日は山の中に来ている。カイザさんから薬草を取ってくるように言われた。魔力の多い薬草は質がよく、それを使ったポーションは効果が大きいらしい。


俺の魔力を察知する能力を鍛えるために質のいい薬草を取ってくるというのが今日の目的だ。


魔力が多いとはいえ、そもそもの魔力が微量だからよくわからない。二つの薬草を比べてはよさそうな方をかごに入れていく。


マルはもっと多くの魔力を操る練習をしていた。カイザさんが言うには、本来ならもっと強力な魔力を出せるはずだが、一つしか魔法を使っていないせいで魔力を持て余しているらしい。


マルもなかなか苦戦しているようだ。大きな魔力の玉を作ろうとしているが途中で制御できなくなって風船みたいに破裂させてる。


「もう嫌なのだー!」


「そうだな、そろそろ休憩にするか」


大きく息を吐きながら草の上に寝転がる。意外と大変な作業だ。全然進んでないし、少し休んだら続きをしないと。


大の字で横になっていると、どこからか草をかき分けてくる音が聞こえる。


そういえばここででかい熊に会ったな。まだ作業は残ってるし、かといって無意味な戦闘をするのもなんだかな。そうだ。


「マル、魔力は使いこなせるようになったか?」


「まだ少し難しいのだ。もう少しのところで破裂するのだ」


「それをあの草むらの中に向かってやれないか?」


「わかったのだ!」


マルの魔力があればショックボールみたいな感じに威嚇できて熊も逃げていくだろうと考えた。マルはどんどん魔力を高め、大きな球を作った。


「おい!それはやりすぎだ!」


破裂と共に莫大な魔力が山中に広がる。ショックボールとは比べ物にならないほどの威力だ。遠くの鳥や動物が鳴きながら逃げていく音が聞こえる。


「うわー!」


ん?人の声だ。


「びっくりした…なんなんだいきなり」


草むらをのぞき込むと、びっくりして倒れこんだ女性がいた。


「すいません、てっきり熊かと思って…」


「悪気がないんなら許すよ。確かにこの山は熊がよく出るからね。それにしてもさっきの凄いね!君がやったの?」


「俺じゃなくてこのちっこいのがやりました」


「へえ、こんなかわいらしいのにすごいね!」


女の人はマルを両手で軽々と持ち上げた。


「子供みたいに扱うのはやめるのだ!吾輩は大人なのだ!」


「おっと、これは失礼」


マルは降ろされてもふてくされている。


「そういえば、君たちはここで何をしているんだ?」


「質のいい薬草を選別しているところです」


「選別⁉もしかして君は魔力を感じ取ることができるの?」


めちゃくちゃ興味がありそうに顔を近づける。


「ま、まだ自然のものは正確に読み取れるわけじゃないですけど、人とか生き物とかは読み取れますけど…」


「だったら、私の仕事を手伝ってくれないか?もちろんお礼もする!」


肩をがっしり掴んだまま放そうとしてくれない。何というか、圧と力がすごい。額に冷や汗が流れてくる。


「し、仕事の内容とかにもよりますけど、できることならやりますよ」


「やった!そう来なくっちゃね!」


嬉しそうにガッツポーズをしている。何だこの人、調子が狂うな…


「私の名前はテイル・ムニカだ。よろしく!」


「俺はユウって言います」


「吾輩はマルリル・ライネス。魔王になるものだ!」


こいつ、また丁寧にあいさつしやがって。


「へえ、魔王に?」


「ああ、子供の言ってることなんで気にしないでください」


「だから子供じゃないのだー!」


とりあえずマルの事は無視して話を進める。


「それで仕事って何ですか?」


「私は獲物を狩って素材を手に入れる剥ぎ取り師をやっているんだが、この山に住んでいるぬしの素材を手に入れたいんだ。だけどぬしはめったに出てこないからね、そこで気にの手を借りたいんだ」


俺がぬしの魔力を感じ取って見つけてほしいというわけか。だったらできそうだな。


「ぬしの素材を手に入れるってぬしを倒すってことですよね?倒せるんですか?」


「私の心配をしてくれるのか?だったら大丈夫だ。この斧でいろんな獲物をしとめてきたからな」


テイルさんは身長ほどある大きな斧を振り回して見せた。こんなものを軽々振り回せるのか。確かに強そうだ。


「だが、もし不覚を取ってしまったらさっきのような魔法でアシストしてくれ」


「まかせるのだ!」


これは俺もマルもいい練習になるな。こうして俺たちは山のぬしを見つけるために奥へと進んでいった。

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