第14話 作戦会議、なのだ!

「そうか、そんなことがあったのか」


昨晩起こったことを伝えにウォーリムさんのところへ押しかけた。


「信用してくれるんですか?」


「ああ、もともとキルトスはモンスターを召喚してこの街を襲わせようとした容疑があったんだ。


だがキルトスがこの街に来た日とモンスターが現れ始めた日が同じだったこと以外確証がなくてね。


しかもあのモンスターは魔族の国テモロンにいた奴だ。もしかすると魔族とつながりがあるかもしれない」


どうやらただのクズ野郎じゃなかったみたいだ。あの時ついでに懲らしめられたらよかったな。


仕事が終わった今、もうかかわることはないだろう。俺たちにもあんな悪態をついていたんだ。今のうちに貴族としての生活を楽しんでおくんだな。


「君たちに次の仕事を頼もう。もう一度館に行って証拠を取ってきてほしい」


「俺らが?ウォーリムさんはいかないんですか?」


「私はやることがあるんでね。それに魔族が絡んでいるとなると戦争になりかねない。だから内密に済ませたいんだ」


事情はわかったけど、証拠なんてどうやってとればいいんだ?キルトスの悪事がばれてしまったからすでに警戒されてるだろう。


ゼナに向かう馬車に揺られながら考えるがないか仲いい案が浮かばない。


結局何も浮かばないまま、とうとう街についてしまった。とりあえず街中で聞き込みとかやってみるか。


いろんな人に声をかけ、わかったことはやっぱりクズ野郎だということだった。


キルトスはいろんな商売をやっているが、どうやら人の売買もやっているらしい。ただ、これといった情報はなかった。


やっぱり潜入するのが一番いいか。でもそんな特殊スキルがあるわけでもないし二人で行動しないといけないから俺たちにはハードルが高すぎる。


「あら、あなたたちは護衛の…」


考えながら街を徘徊していると、見知った人が目の前に立っていた。キルトスの館にいたメイドだ。どうやら買い物に来ていたようだ。


「今この街に来てはいけません、早く帰ってください!」


周りに気づかれないように声を潜めて必死に訴えかける。どういうことだ?


「旦那様があなたたちを探しています。見つかればどんなことをされるかわかりません」


やっぱりそうか。だったらこうして聞き込みをしているのも危険だろう。大胆な行動はもうできないな。


「教えてくれてありがとうございます。でも、どうしてそれを教えてくれたんですか?キルトスに仕えてるんなら言わない方がよかったんじゃないですか」


「私はあなたたちが悪い人には見えませんでした。それにそこの女の子が小さい頃の私に似ていて、私と同じ目にあってほしくないんです」


あんな奴のメイドなのにとてもいい人だ。この人は好きであいつのところに仕えているわけではないみたいだ。


「気持ちはありがたいんですが、あいつの悪事の証拠を取りに行かなきゃいけないんです」


「そうなんですね。わかりました、では私に手伝わせてください。私の名前はアリス・ミカルダと言います。私にできることは何でも言ってください」


アリスさんはキルトスについてのいろんな情報をくれた。キルトスは夜な夜な変な装飾されている扉の中に入っていくらしい。


その扉は魔力を認証して開く仕組みになっていて、扉を開けられるのはキルトスだけだ。


「夜になったら私が裏口を開けておきます。そこから入ってきてください」


「怪しい場所が分かっても入れないんじゃな」


「キルトスと同じ魔力を流せば行けると思うのだ」


「同じ魔力を流す?そんなことできるのか」


「ただ、相手の魔力を読み取ることができなければ無理なのだ。吾輩はできなかったのだ」


「でも方法がそれしかないだろ。どうやるんだ?」


「よくわからないのだ。なんか感情とか空気感を読み取りやすい人ができるみたいなのだ」


感情と空気感を読み取りやすい?他人の目を気にしながら生きてきた俺からすればいけそうだ。試しにマルの魔力を感じ取ってみる。


…少しわかるような気がする。これが他人の魔力か、俺のと全然違う。


「多分できるぞ」


「ほんとか⁉すごいのだ!」


「この後どうすればいい?」


「感じた魔力と同じ魔力を作り出すのだ」


集中してマルの魔力をまねてみる。


「…だめだ、お前の魔力が強くてまねできない」


「まあキルトスは普通の人間だから多分簡単なのだ」


「そうか、だったらいけるな」


いい感じに作戦がまとまった。アリスさんがキルトスに睡眠薬を混ぜたお酒を飲ませ、裏口を開ける。そこから侵入し、謎の扉を開ける。完璧だろう。あとは夜まで待つだけだ。

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