第13話 キルトスを追いかけろ、なのだ!
無事に街に着くことができた。商談が終わったらここに泊まって帰るみたいだ。その間も護衛は続き、一緒に行動しなければいけない。宿も同じところに泊まるらしい。
特に問題があるわけでもなく、ただ騒がしくしているマルを横目になかなか進まない時計の針と一緒に時を刻むだけだった。
何事もなく商談が終わり、やっと宿で休むことができた。
「なんなのだこの仕事は!退屈すぎるのだ」
「仕事なんだから仕方ないだろ。明日で終わりだから我慢してくれ」
ほとんどこいつの子守で疲れた。明日も今日の奴らが来るのかな。何か対策を考えておいた方がよさそうだ。
「ユウ起きるのだ…トイレに行くのだ…」
気づいたら寝てしまっていたようだ。マルも寝ていたらしく、まだ眠そうにふらふらしている。
「そうか、ちょっと待ってくれ」
眠気覚ましに窓を開けて夜の冷たい空気を浴びる。
ん?あれは…あの丸い体はそういるもんじゃない。キルトスだ。誰もいない夜の街を一人で歩いている。
何やってんだ?そこで襲われたらどうするんだ。仕方ない、後を追うか。
「マル、行くぞ。仕事だ」
「ほえ?」
マルを抱えて部屋を飛び出しトイレに突っ込む。何やら中で文句を言っているようだがそれどころじゃない。早く行かないと見失ってしまう。
トイレから出てきたマルを担ぎ、急いでキルトスを追いかける。確かこっちに行っていたはず。
キルトスが向かっていた方に進んでいくと、この前俺たちが魔法陣を消した洞窟に着いた。キルトスは周りを警戒しながらその洞窟の中に入っていった。
こんなところで一体何をしているんだ。怪しさ全開だ。俺たちもキルトスに築かれないように中に入っていく。
洞窟の奥まで来た。岩陰から様子をうかがう。暗いせいでよく見えないが、地面に何かしている。
キルトスが立ち上がると地面が淡い光で包まれた。どうやら魔法陣のようだ。光が強まるとともに中からモンスターが現れた。
「おい!何してるんだ!」
溜まらず岩陰から飛び出して叫んだ。キルトスはびっくりした様子でこっちを振り返る。
「お前たちこそ何をしている。知ってしまったからにはただで返すわけにわいかないな」
モンスターが俺たちのほうを見ている。どうやらあいつが操っているようだ。
「まさか、前にもこんなことをしたのか?」
「ああ、そうだ。せっかくうまくいったのに、いつの間にか消されていたからもう一度来る羽目になった」
「なぜこんなことをしたんだ」
「私は金のためならなんだってやる。金さえあればすべて思い通りだ。どうだ、お前も少しは役に立ちそうだから、私の部下にしてやろうか?大量の金も用意しよう」
「誰がお前なんかの下に付くか」
「そうなのだ!ユウは吾輩のものなのだ!」
「話がややこしくなるから入ってくるな。そもそもお前のものでもないからな」
「まあいいさ、初めからお前たちを捕まえて売り飛ばすつもりだったからな。やれ」
キルトスがモンスターに指示を出すと、こっちに向かって飛び出してきた。
「シャドウボール!」
マルが数発シャドウボールを食らわせるが止まらずに突っ込んでくる。俺はマルを抱え、間一髪で回避した。
突進で岩が粉々になっていた。どうやらでかいうえに表面は固くなっているようだ。そのせいでシャドウボールが効いてなかったのか。
「やばいのだ!どうするのだ!」
攻撃が効かない相手に慌てふためく。さすがにこれじゃての出しようがない。寝る前に考えていたやつを試してみるか。
俺たちが襲われたときにやった斬撃を飛ばすやつは威力が小さかった。俺の力不足に加え距離があったからだろう。
でも、逆に言えばあの距離と威力で傷を負わせることはできたということだ。だったらやることはひとつ、直接攻撃だ。
「マル、おれをあいつめがけて投げろ」
マルの怪力で男を振り回すことができたんだ。俺を投げることぐらいできるだろう。
「そんなことして大丈夫なのだ?」
「大丈夫だ、今回は俺に任せとけ」
モンスターが体勢を立て直し、こっちを向く。
「わかったのだ!行ってくるのだ!」
腕をつかみ、思いっきり俺を投げ飛ばす。モンスターが飛んでくる俺を叩き落とそうと腕のようなものを振り上げる。すかさずショックボールをモンスターに向かって投げる。
放出される魔力に怯み、攻撃をやめる。よし、いける。斬撃を飛ばした時のように魔力を流す。そしてそのまま腹部をめがけて突き刺す。
モンスターが耳をつんざくような奇声を上げ苦しむ。
うまくいったようだがまだだ。そのまま傷を開くように上に突き上げた。そしてその中に最後のショックボールを入れる。
ショックボールの衝撃で体の中があらわになった。さすがに中は弱いだろ。
「いまだ!マル!」
俺の合図と同時にマルがシャドウボールを発射する。見事中に命中し、モンスターは倒れて動かなくなった。
「やったのだ!さすがユウなのだ、ほめてやるのだ」
「やめてくれ。俺はお前みたいな子供じゃないんだぞ。それよりも…」
俺はキルトスを見る。こいつをどうするか。
「とりあえずおとなしく来てもらおうか」
「くそ!」
キルトスが煙球を投げた。洞窟内は煙で覆われ、晴れたころにはキルトスの姿はなく、消えていく小さい魔法陣があった。
どうやら逃げられたようだ。モンスター召喚の魔法陣を消すため、並べられた魔石を回収した。このことはウォーリムさんに報告しないと。
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