第11話 貴族からの依頼、なのだ!

「それじゃあ最初の仕事やってもらおうか」


いきなりゴールドクラスの仕事をするのか。どんな仕事だ?


「君たちにやってもらうのは貴族であるキルトス・マリアーゼ様の護衛だ。隣の街からこの街までを往復する間の護衛をして欲しい。といってもモンスターが出てくることはあまりないから、ほとんどビギナーの君たちには問題ないだろう」


「それだったらわざわざ俺たちに頼まないで表の掲示板に貼って募集すればいいじゃないですか」


「これはキルトス様直々の依頼でゴールド以上の冒険者であることが条件で高い報酬も出てるんだ。適当な人材を送るわけにはいかない」


「そんな仕事に素人の俺らを行かせるんですね。大丈夫ですか」


ギリギリ言葉を選んでいろんな意味を込めた『大丈夫ですか』が出た。


「これも君たちを見定めるためであり、私としてもいろいろ考えた結果だ。君たちが我々の望むような人材になることで信頼を得てくれ」


というわけで俺たちは隣の街「ゼナ」からこの街「アルベール」まで護衛をすることになった。前日に館に行き、一泊してからこの街まで護衛をするらしい。


そもそも護衛ってどうすればいいんだ?モンスターはあまり出てこないとはいえ、手ぶらで行くわけにはいかないだろう。そう思ってカイザさんの店に立ち寄ってみた。


「いらっしゃい、どうかしたかね?」


「護衛の仕事をすることになったんですけど、俺でも扱えるおすすめのものはありますか?」


「それなら扱いやすい短剣がいいだろう」


短剣か。戦いなんてやったことはないけど、ないよりましだろう。その辺に置いてあった短剣を手に取ってみる。


確かに力のない俺でも持ちやすい。これにするか。


「武器にも自分の魔力を込めることができるんだ。斬撃を飛ばしたりより強力な一撃を出したりできるから試してみるといい」


武器に魔力を込める?なかなか難しいな。まだ魔力をうまくコントロールできていないみたいだ。


「それからこれも持っていくといい」


渡されたのは手のひらサイズのボール型のアイテムだ。


「ショックボールだ。このアイテムは強力な魔力を放出し相手を威嚇することができるアイテムだ。


モンスターが現れた時、スイッチを押してモンスターのほうに投げると、怖気づいてにげていく。ただ、強い相手には効果がないから気を付けなければいけない。


護身用にはちょうどいいだろう」


なかなかいいアイテムだな。3つくらい買っていこうか。準備は多分これくらいで大丈夫だろう。




馬車乗り場に行って馬車に乗る。数時間あればつくらしい。元の世界で馬車に乗る機会なんてないからちょっとワクワクしている。車よりのんびり景色を楽しめるし優しい風が気持ちい。


「おぉー!でっかい館なのだ!」


さっきまで馬車の中で寝てたのに元気だな。玄関の前に行きベルを鳴らす。しばらくすると中からメイドのような人がドアを開ける。


「どちら様でしょうか?」


「ギルドから護衛の依頼を受けてきたものなんですけど」


会員証を出してメイドさんに見せる。


「お待ちしておりました。旦那様がお待ちです。どうぞ中へ」


高そうな絵画や骨董品が廊下に並んでいる。はぐれたら迷子になりそうなほど広い。


長い廊下の一番奥の部屋に案内された。ドアが開けられると、中にはいかにも貴族というような太った人がいた。


「旦那様、護衛の者が到着いたしました」


「君たちが私の護衛に着くのか?ふん、私も安く見られたものだな」


感じ悪そうにまじまじと俺たちを見て吐き捨てた。


「そこの子供はなんだ。子供に仕事を頼んだ覚えはないぞ。それとも、うちに売られに来たのか?」


なんだって?とんでもないことを言うやつだな。


「吾輩は売り物じゃないし子供でもないのだ!」


「そうか、その気になればいつでも買い取ってやる。まあいい、金の分の仕事はしてもらうぞ。おい、そいつらを部屋に案内しろ」


「かしこまりました」


こいつの護衛をしないといけないのか。腹が立つが仕事が終われば赤の他人だ。少しの我慢だ。


「なんなのだ。吾輩あいつ嫌いなのだ」


「いきなり直球なこと言うな。仕事なんだから人前でそんなこと口にするなよ」


「申し訳ありませんあのような方で。気を悪くされていませんか?」


「別に気にしないでください。何とも思っていませんよ」


もちろんそんなわけないが、気を遣ってくれたからこちらも反射的に気を遣う。このメイドはあいつと違っていい人そうだ。


「あなたも誰かの僕なんですか?お互い大変ですね」


そう言われてメイドの腕を見てみるとこのメイドも俺と同じ僕の腕輪をしていた。


「ああ、ええ、まあ」


説明がめんどくさいから適当に流しておく。


「ユウは吾輩の下僕なのだ!」


「余計なことを言うな!」


「そうだったんですね。貴族の中には社会勉強として数か月召使いと一緒に親元を離れるということをやっていると聞いたことがありますが、本当だったんですね」


「まあ、そんな感じです」


マルが余計なことを言わないように口を押さえながら答えた。


「ずいぶん仲良しなのですね。羨ましいです」


メイドはどこかさみしそうな感じがした。あの主人の事だ、いいようには扱われてないんだろう。


「余談が過ぎましたね。お部屋はこちらです」


案内された部屋は相変わらず豪華な装飾がされた家具で並んでいた。


「では、夕食の準備ができましたらまた案内させていただきます。それまでごゆっくりおくつろぎください」


こんな部屋じゃ逆にくつろげないな。マルは物珍しそうにいろんなものを物色している。頼むから壊さないでくれよ。

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