第10話 ギルドマスターの呼び出し、なのだ!

帰りに普通の服屋で俺の服をそろえ、残ったお金で食料を少し買って帰った。今日でほとんどのお金を使ってしまったから明日もギルドに行かないとな。次の仕事は少し難しいやつを見てみようかな。



空の色が変わりかけたころに家に着いた。ちょうどおなかも減ってきた。何か作ろうとキッチンへと向かう。


「そういえば、ユウは料理できるのだ?吾輩はやったことないのだ」


「一人暮らししてたからそれなりにできるぞ。俺に任せとけ」


料理をしている間、マルがまるで魔法でも見ているかのような顔で見てくる。ちょっとやりにくいな。


「よし、できたぞ!」


俺が作ったのは目玉焼きのせハンバーグ。嫌いな人はほぼいないであろうからマルも食べられるはずだ。


「おおー!おいしそうなのだ!いただくのだ!」


子供みたいな反応をしてバクバク食べている。


「おいしいのだ!」


「お口にあって何よりだ」


「さすが吾輩の下僕なのだ」


「だから下僕じゃねえ」


こんなに喜んでくれるなら作り甲斐がある。気づいたら皿がきれいになっていた。


「まだ食べたいのだ!」


「もうないからまた今度な。だったらもっと稼いでたくさん食材買わないと」


今日は明日のためにゆっくり休むことにした。




日が変わってギルドにやってきた。できる幅が広がったからよさそうな依頼がたくさんある。


「これはどうなのだ?」


どれどれ…『クラーケンの討伐』


「身の程を知れよ!推奨ランクゴールドって書いてあるだろ。却下だ」


「え~行きたいのだ」


そんな話をしていると、受付の人が話しかけてきた。


「ユウさんとマルリルさんですね。ギルドマスターがお呼びです」


ギルドマスター?まだギルドに入って三日目なのに呼び出しを食らうとは。とりあえず行くか。


俺たちはギルドマスターの部屋に案内された。中に入るといかついおじさんが真ん中の机に座って書類を眺めていた。


「やあ、君たちか。待っていたよ」


優しい声ではあるが、少し警戒されているように感じる。


「私はギルドマスターのウォーリム・テスカーだ。立ち話もなんだから、そこに座ってくれ」


俺たちは言われた通り来客用の椅子に座った。


「さて、君たちをここに呼んだのは聞きたいことがあったからだ。君たちは農場に現れるモンスターを倒したね」


「まあそうですけど…」


「吾輩がやったのだ!」


「そうか、そのあとにうちの調査員が調べに行ったらモンスターが現れなくなっていた。君たちが何かしたのか?」


「モンスターを倒した後、近くの洞窟に行って中にあった転移魔法の魔法陣を消してきました」


「ほう、やっぱり君たちだったか。この洞窟は結界魔法が作られていて人間は簡単に入ることができないようになってたんだ。そんな時、どういうわけか君たちが問題を解決してくれたということだ」


結界なんてものがあったのか。だから俺には入れない感じがしたのか。


「この依頼には手を焼いていたんだ。ありがとう。今回の件の報酬をあげよう」


お金の入った袋を渡された。中には銀貨が入っていた。


「話は変わるが、どうやら数日前に魔族がこの街に入り込んだみたいなんだ」


急に目つきが変わった。目線の先はマルだ。


「それと同時に君たちはうちのギルドに登録し、人間は入れない洞窟に入り込んだ。妙だと思わないか?」


疑いの目がマルに向けられる。これは言い逃れができないか。


「君からは魔人の魔力を感じないが念のためだ。そのフードを取ってもらおうか」


「はーーーっはっはっ!ばれてしまっては仕方がないのだ。吾輩こそがマルリル…」


「自己紹介している場合か!早く逃げるぞ!」


俺はマルを抱えて部屋を出ようとする。


「まあ落ち着け。何も今すぐ消してしまおうというわけじゃない。現に人助けをしているからね。ただ、完全に信用しているわけじゃない」


「じゃあどうすれば信用してもらえるんですか」


「君たちのランクをゴールドまで引き上げさせてもらう。そして私の出す依頼をやってもらおうか。もちろんそれに対する報酬も上げるつもりだ。悪い話じゃないだろう」


このまま断ったら街中の人が敵になるんだろうな。特に断る理由もないし、おとなしく従おうか。


「わかりました。それで疑いが晴れるのであれば」


「ありがとう。それにしても君たちは不思議な関係だな。君の腕についているものはしもべの腕輪だろう。なのに君たちの立場は平等に見える」


「これに関してはいろいろあったというか…」


「そうか。君も洞窟に入ったのか?」


「そうですけど、そういえばなんで俺も入れたんですか?」


「その腕輪にもその子の魔力が流れているから、結界の力が軽減されていたのかもな。それでも中に入るのは困難だったろう。よくやってくれたな」


そういう理由があったのか。この腕輪だけでそう簡単に入れるものなのか。


「従うのはいいんですけど、こいつが魔族ってことは秘密にしてくれるんですか?」


「ああ、それに関しては問題ない。こちらとしても魔族が入り込んでいると知られたら大パニックになるからね。秘密にしておくよ」


警戒されてたけどいい人そうでよかった。この人強そうだし、敵に回さないようにしないと。

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