第8話 街の中でお店探し、なのだ!

「服なんてなんでもいいのだ。それよりご飯なのだ」


「魔王になろうとしている奴がそんな恰好でどうすんだよ。見た目で舐められるようなやつでいいのか?」


「うーん。それもそうなのだ。でもどの服を着ればいいのかよくわからないのだ」


「それなら俺に任せとけ。服選びは得意だからな」


ゲームのキャラクリに力を入れるタイプの俺にとって服選びなんて朝飯前だ。手持ちはあまり多くないが、これでやりくりしよう。




一軒目の服屋に着いた。見たことのないデザインの服がたくさんある。面白い服はたくさんあるけど、これといったやつは見当たらない。別の店に行こうか…


「何かお探しですか?」


悩んでいると店員さんが話しかけてきた。


「い、いや、別に…大丈夫です!」


コミュ障が発動してしまい、とっさにマルを連れて店から出た。あんな人異世界でもいるのか。仕方ない、別のところに行くか。




二軒目の服屋を見つけた。ちょっと質がよさそうな服屋だ。なかなかいい服が並んでいるが、思っているような服はない。それにちょっと高いな。ここはあきらめるか。


「おおー!すごいのだ、この服きれいなのだ!」


マルがいろんな商品手にとって大雑把に広げている。


「おい!あんまり商品に触れるな!何かあったら弁償しないといけないだろ!」


「ゴホンッ!」


店員が咳払いをして俺たちのほうをにらみつけている。


「あ…ごめんなさい!」


慌てて店を飛び出した。ここもダメか。次の店を探そう。




三軒目の店は古着屋っぽいみせだった。値段は安いがちょっと古臭いものばかりだ。ピンとくるものもないし、この店はなしだな。




いろいろ回ったわけだが、あまりいいのがない。何かほかにいい店がないか…


ふと横を見てみると、怪しげな路地裏が見えた。気になって奥に進んでいく。薄暗い通路の先にあったのは、いかにも怪しい店だった。


看板を見ると、『魔道具屋』と書いてあった。表の通りにもあったな。服屋とは違ったが異世界ならではの要素と独特の雰囲気に興味を誘われる。


やばそうな感じしかしないが、いざとなればマルがいるし大丈夫だろう。




古いドアが甲高い音を立ててゆっくり開いていく。中にはおじいさんらしき人がいる。顔はフードと店の薄暗さでよく見えない。


「いらっしゃい。待っていたよ」


「待ってた?俺たちがここに来るのは初めてです。人違いでは?」


「いや、人違いではない。そこの小さいのから強い魔力を感じていた。それからあんたからも」


ふぉふぉふぉ…と不気味に笑う。ただ者ではないが敵意は感じない。


「俺からも?そういえば魔石を持っていたな。もしかしてこれか?」


「おお、その石を持っていたとは。よろしければその石、わしに譲ってくれんか?うちの商品は魔石を多く使うからね。そうしてくれたらうちの商品を値引いてやろう」


ざっと商品を見てみると面白そうなものが置いてある。普通のものでも様々な効果がついているようだ。


これが魔道具か。よさそうな服もある。ここでそろえるのがよさそうだ。


デザインや効果もいい感じだ。マルに試着させてみる。ちょっとサイズが大きいか。


「これの小さいやつってないんですか?」


「あいにく利用者が少なくてね。大人用しか置いてないんだ」


「吾輩は大人だから問題ないのだ」


ほかの店もないし本人も納得しているみたいだしこれでいいか。魔石三つと銅貨三十枚で買うことができた。


「ところであんたは魔法を使う気はないかい?」


「俺が魔法を?できるんですか?」


「普通なら長い修業が必要だが、魔石を使えばすぐにつかえるようになる。よかったらわしが教えようか」


俺でも魔法が使えるのか。このまま何もできないのも嫌だし教えてもらおうか。


「じゃあよろしくお願いします」


「ただ、教えてやる代わりに、もし魔石を手に入れる機会があればぜひここに持ってきてくれんか」


「わかりました」


これで俺も魔法が使えるようになるのか。少しワクワクしている。どんなことを教えてくれるんだろう。

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