第7話 ギルドへ報告、なのだ!
農場にいる鶏の鳴き声で目が覚める。いいベッドのおかげでぐっすり眠ることができた。マルはまだ寝ている。
「おい、起きろ。朝だぞ」
ペチペチと頬をたたく。
「まだ眠いのだ…」
こいつが起きないと部屋を出ることができないんだけど。そうだ!俺はマルの上にまたがった。
「俺は男じゃなくて女なんだ」
ヒュー…
嘘をつくことによって上からたらいが降ってくる。俺はそれを華麗に避ける。
カンッ!
「いったーいのだ!」
作戦通りマルの頭にたらいが落ちていった。
「何するのだ!」
「一番いい起こし方だろ?お気に召したか?いででででっ!」
急に体中に電撃が走った。
「お仕置きがうまく実行されなかったら一つ上のお仕置きが実行されるから注意するのだ。ざまあみろなのだ!」
「はぁ…はぁ…それ先に言ってくれ…」
準備をしてリビングに行くと、おばあさんが朝ご飯の支度をしていた。相変わらずいい匂いがしてくる。
「あら、おはよう。よく眠れたかしら。朝ご飯はもうできているから食べていって」
「わーい!食べるのだ!」
「何から何までありがとうございます」
「気にしないで。あなたたちのおかげでこの料理を作ることができたようなもんだから」
おばあさんは満面の笑みで答えた。こんなに良くしてくれるなんて、人助けも捨てたもんじゃないな。
ご飯を食べ終え、出かける準備をする。家を出ようとするとおじいさんとおばあさんが見送りに来てくれた。
「何かあったらいつでも頼ってくれ」
「はい、お世話になりました」
「またご飯食べに来るのだ!」
「えぇ、待ってるわ」
一礼して街へと向かう。なんだか体の調子がいい。
「はい、確かに受け取りました。こちらが報酬となります」
受け取ったのは銅貨20枚。多いのか少ないのかよくわからないな…後で店を見回ってみるか。
「あ、それと農場のおじいさんからモンスター討伐の依頼とか来てないですか」
「はい、ありますけど、どうかしましたか?」
「薬草を取って帰る途中に助けを求められてモンスターを倒してきたんですけど、その分の報酬とかってもらえないですかね」
「お客様はまだビギナーランクですので伝えられていないと思いますが、討伐の依頼を受けるにはアイアンランク以上の方であり、事前に申請していただく必要があります。
そうしないと虚偽の申告や横取りが増えますからね。ですので報酬をあげるわけにはいきません」
このギルドの決まりだし仕方ないとはいえ、何もないのか。たくさんお金がもらえると思ってたのに、残念だ。
「もしあなた方がモンスターを倒すほどの実力があるのであれば、昇格試験を受けることができますよ」
昇格試験か。仕事の幅が広がるし、やっておいて損はないな。
「それで、何をすればいいんですか?」
「アイアンへの昇格試験ですと、『スライムの粘液をびん5本分取ってくる』ですね。
試験を受ける際は自分のランクより上の方をパーティーに加えることはできませんので気を付けてください」
「じゃあ、こいつの分の試験を受けさせてください」
「なんで吾輩だけなのだ。ユウは受けないのだ?」
「俺は戦闘になると何もできないからな」
「では、試験を受けるのは1人でよろしいですか」
「よろしくお願いします」
スライムはいろんなところにいるらしいが、街を出たところの草原だと狩りやすいらしい。俺たちもそこでスライム狩りをしようと思う。
草原に出て見渡すと、何匹かスライムがぴょんぴょん動いていた。
「あいつらをやればいいのか?」
「ああそうだ。好きなだけ暴れてこい」
「はっはっは!あいつらに地獄を見せてやるのだ!」
スライム相手に物騒なことを言ってもかっこよくはないんだが。
マルは目に映るスライムは次々に倒していった。倒すのに夢中になって粘液の回収を忘れてないか?仕方ない、俺が回収しておくか。
「おーい、マル!もういいぞ!というかもうやめてくれ!」
気づくとびん20本分集まった。こんなに要らないぞ。どうするんだこれ。
「楽しかったのだ!」
「楽しみすぎだ!どうするんだこの量、必要ないだろ!集めた俺の身にもなってくれよ。ちゃんと考えてやってくれ」
「それは悪かったのだ。それじゃあ届けに行くのだ!」
まったく反省してないな。いつか懲らしめてやるからな。
ギルドに帰って、無事にマルの昇格手続きが済んだ。残りの粘液はギルドが買い取ってくれた。
「これで戦いに行けるのだ!どんどん倒すのだ!」
「お前はいつでも気楽でいいよな。お金が手に入ったし、買い物に行くか」
「ごはん買うのだ!」
「いや、ご飯は数日分あるからそれよりも服だな。お前のそのボロボロな服のままじゃダメだろ。もっとましな服を探そう」
正直俺のこのTシャツのままじゃいやだしな。ついでにいろんなお店を回ってみるか。
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