第6話 一晩お泊り、なのだ!
洞窟を出ると辺りは薄暗くなっていた。おじいさんがいた畑へ戻ると、おじいさんは薄暗い中ずっと俺たちの帰りを待っていた。
「おお、無事だったか!それで、どうだった?」
「ばっちりなのだ!もうモンスターは来ないから安心するのだ!」
「本当か!ありがとう!」
おじいさんはその場で泣き崩れた。
「本当にありがとう。わしの生活を救ってくれたんだ、ぜひお礼がしたい。もう暗くなってきたことだし、わしの家に泊まっていくといい」
空を見るときれいな星空が広がっていた。ここから家に帰るとなるとだいぶ時間がかかるから、お言葉に甘えて泊めてもらうことにした。
おじいさんの家はそこそこ豪華な家だった。なんでも、このおじいさんはこの辺りの農場を仕切っていて、ここでとれた野菜や肉などを街に卸しているらしい。
おじいさんに連れられて中に入ると、おばあさんが夕ご飯の準備をしていた。
「おかえり。おや、その子たちは?」
「この子らがあのモンスターを退治してくれたんじゃ。これで安心して生活できるぞ」
「そうかい、あんたたちがやってくれたのかい。ありがとねぇ」
「吾輩が全部やっつけたのだ!」
「そうかい、小さいのに勇敢なのね」
おばあさんはマルの頭を撫でた。それはまるで孫をかわいがるおばあさんのようで、吹き出しそうになるのを必死にこらえる。
「さあ、おなかが減っただろう。取れたての食材で作った料理を食べておくれ」
「やったのだ!」
「ありがとうございます。いただきます!」
キッチンからものすごくいい匂いがしてくる。匂いを嗅いだら気が抜けたのか、とてつもなくおなかが減ってきた。
出てきた料理はどれも豪華だった。ステーキ、サラダ、スープなど、いろんなものが机いっぱいに並んでいる。
さすがにこの量は食べられないぞ。でもせっかく作ってもらったから残すわけにはいかないな。無心で口の中にほおばっていく。
ご飯を食べ終わった後、俺たちは来客用の部屋に案内された。ふかふかのベッドを見た瞬間、マルがベッドにダイブした。
俺もパンパンになったお腹をさすりながら横になる。
「今夜はここでゆっくりしていってね。あと、お風呂もあるから好きに使っていいわよ」
「やったー!お風呂なのだ!」
お風呂か。今日はいろいろありすぎて疲れたからゆっくり癒されに行くか。
「そういえば俺らどうやって入るんだ?」
「もちろん吾輩が先に入るのだ!」
「そうじゃなくて、俺たち離れられないからどうするんだってことだよ。一緒に入るわけにはいかないだろ」
「お前は吾輩の下僕なんだから、主が無防備になっている間見張りをするのは当たり前なのだ。だから一緒に来るのだ。
別に一緒に入らなくていいのだ。吾輩もお前と一緒に入るのはごめんなのだ。ドアの前で待ってればいいのだ」
結局俺はマルがお風呂に入っている間、ドアの前で待つことになった。
「はぁ~、気持ちいいのだ~」
ドアの向こうから力の抜けた声が聞こえる。どうやらマルも相当疲れていたようだ。
初めての世界でいっぱいいっぱいになっていたけど、マルも遠い場所まできてずっと不安だったんだろう。待っている間暇だけど我慢しよう。
「今日はすごく疲れたのだ。ユウがいてくれてよかったのだ」
「いきなり何言ってるんだ。俺はほとんど何もしてないだろ」
「そんなことないのだ。ユウはなんだかんだ優しいからうれしいのだ」
「それはどうかな。まだ1日一緒に過ごしただけで、俺の事は何もわからないだろ。もしかしたら、お前を利用して俺が魔王になろうとしてるかもしれないぞ」
ヒュー…カンッ!
「は?」
なぜかたらいが落ちてきた。
「はっはっは!どうやら嘘だったようなのだ。まあ、たとえ本当だったとしても、その時は吾輩がお前を懲らしめて、2度と逆らえないようにしてやるのだ!」
そうだ、忘れてた。俺は嘘もつけないんだったな。
「お前の事を完全に理解したわけじゃないが、今は吾輩の中ではいいやつなのだ。召喚は失敗したけど、召喚されたのがユウでよかったのだ」
「…」
なんかだんだんむず痒くなってきた。こんなことを言われる機会ははかったからな。どういう反応すればいいかわからない。
「そう思うんだったら早く風呂を交代してくれよ」
「それは嫌なのだ!もう少し待つのだ」
マルが上がった後、俺も風呂に入った。こんなに気持ちよく感じるのは初めてだ。ゆっくり入っているとマルが駄々をこね始めたからしぶしぶ風呂から上がった。
あとは寝るだけだ。明日は仕事の報告をしにギルドへ行かないといけないな。それから洞窟の件も勝手にやったことも報告しないと。いろいろ考えているうちに眠りについていた…
ガサガサ…
「うぅ…トイレなのだ…」
ガチャ、キィー…
ヒュー…カンッ!
「がはっ!…あれ、マルがいねえ!おい!勝手にどっかに行くなーーー!」
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