第5話 いざ、洞窟探索、なのだ!
おじいさんから薬草の使い方を教えてもらい、納品する分を残して薬草を傷薬として使えるようにしてもらった。それから灯りとしてランタンを貸してもらった。
「何ぐずぐずしているのだ。早くいくのだ」
待ちくたびれたマルが駄々をこねる。必要そうな量の薬はできたし、覚悟を決めて洞窟に向かう。
「そういえばあのモンスターはこの辺じゃ見ないって言ってたけどどういうことだ?」
「あいつらは吾輩が住んでた国にいて、こっちにはいないはずなのだ。それに、こんなに人間の街が近いからあまり近づいてこないはずなのだ」
「なんか意外と詳しくて頼りになるな。さっきの戦いもすごかったし」
「当たり前なのだ。ちゃんと勉強もしてるし戦う訓練もしてるのだ。全部任せるのだ!」
すごくやる気なマルを見ていると、なんだか大丈夫な気がしてきた。
しばらく歩くと洞窟らしきものが見えてきた。入口の前にはさっきのようなモンスターが数匹いる。
モンスターはこちらに気づくと、一斉に襲い掛かってきた。
「まとめて消してやるのだ!シャドウボール!」
さっきのような球を何発も打ち出した。命中したモンスターは影に包まれ灰のようにバラバラになって消えていった。
「魔法ってすごいな。俺のいた世界には魔法なんてなかったから羨ましいよ」
「そうなのか?お前の世界は大変なのだ」
「なあ、もっとほかの魔法も見せてくれよ」
「そ、それはまた今度にするのだ!早くいかないと日が暮れてしまうのだ!」
マルはごまかすように足早に洞窟の中に入っていった。あいつまさかあの魔法しか使えないんじゃ…
洞窟の入り口に近づき、貸してもらったランタンを使って中を照らす。
「ここを進んでいくのか…」
何とも言えない嫌な感じがしている。何というか、入ってはいけないと本能に語り掛けてるような、変な感じだ。
「おい、命令だ、お前が先に進め」
「効かないに決まってるだろ。もしかして怖いのか?」
「そ、そんなわけないのだ!吾輩は魔王になるのだ。怖いものなんて何もないのだ!お前こそ怖いんじゃないのか?」
「いや、そういうわけじゃないけど、なんだか入りたくないような…それに俺が前に立ってモンスターに襲われたらどうするんだよ」
「つべこべ言わず入るのだ!お前は吾輩の下僕なのだ!少しくらい言うことを聞くのだ!」
「いつからお前の下僕になったんだよ。お前みたいなガキんちょの下に付くつもりはない」
言い争っていると、いきなり中から黒い物体が無数に飛んできた。
「「ギャーーッ!!」」
ただのこうもりのようだ。
マルはすっかりビビってしまったようだ。
「はぁ…じゃあこれでどうだ」
俺はマルの手を握る。
「これぐらいしかできないぞ」
マルの顔は少し驚き、そしてすぐに笑った。
「これで行くのだ!吾輩に任せるのだ!」
ずいぶん調子のいいやつだな。と思いつつ俺もこれならいける気がした。
中は相変わらず不気味な雰囲気で満たされていた。モンスターは見つけ次第マルが倒していった。だがモンスターの数は思っていたより少なかった。
「ここに住み着いている痕跡もないのだ。もう少し奥に行ってみるのだ」
しばらく進んでいくと広い空間に着いた。どうやらここで行き止まりらしい。真ん中をよく見ると、淡く光る魔法陣らしきものがあった。
「これは…転移魔法なのだ。誰かがこれを描いてさっきのモンスターを送ってるのだ」
「なるほどな。それでどうすればいい?」
「魔法陣は書くときに使われた魔力によって残ってる時間が変わるのだ。でもこの魔法陣は魔石を使って長時間残るようにしてあるのだ」
よく見ると魔法陣の形をなぞるように石が五個置いてあった。
「魔石を魔法陣から離すと魔石からの魔力供給がなくなって自然と消えるのだ。モンスターが現れるようになってからかなり時間が経っているから魔法陣自体の魔力も残っていないと思うのだ。だからすぐに消えるのだ」
「だったら早く石を回収してここを出よう」
石を回収すると魔法陣の光が消え、次第に消えていった。これで一件落着だな。
こんなにあっさり終わるなんて思わなかった。まあ、何もないに越したことはない。戻ってあのおじいさんに報告だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます