第3話 人間の街で仕事探し、なのだ!
「数日分の食料はあるみたいだな」
キッチン近くの棚を開けて残りの食料を確認する。家の横に井戸があったのは見えたから水には困らなそうだ。食料の確保は自力でなんとかしないと。
「マルってお金持ってんの?」
「勝手に家を出てきたから持ってないのだ」
「稼ぎかたは?」
「吾輩が住んでた国とは違うからわからないのだ」
そんな状態でよく家を出てきたな。なんで家を出てきたんだ?
「この辺に街とかないのか?」
「少し離れたところに人間の街があるのだ」
「じゃあそこに行って情報収集と職探しだ」
俺たちは出かける準備をした。と言っても、特に準備するものはなかったが、マルはなぜかフード付きのローブを持ってきた。
「それ必要なのか?」
「必要なのだ。吾輩は魔族だから人間に見つかると大変なのだ」
どうやらこの世界にはこの世界の常識みたいなのがあるみたいだ。道中この世界についてマルから聞くことにした。
この世界はいろんな種族が存在していて、それぞれが町や村、国などを作って生活している。
その中で、人間の国『ラウバク』と魔族の国『テモロン』の勢力が非常に大きく、たびたび戦争も起きている。ほとんどの国はどちらかの勢力に入っている。
マルはルイスさんに頼んで、家族から見つからないように魔族の国から敵対している人間の国に逃がしてもらった。
ルイスさんはマルの父親の僕だからずっとマルのそばにいるわけにもいかず、召喚魔法を教えてもらった。それで召喚されたのが俺だった、ということらしい。
どの世界でも物騒だな。こんな世界の魔王になるって改めて考えると無茶すぎる。とんでもないことに巻き込まれてしまった。
教えてもらっているうちに森を抜ける。平原の中にいろんな建物が立ち並ぶ場所が見える。
「あれが街か。結構大きいな」
「人間の街初めて見たのだ」
「マルが魔族だとばれないように気を付けろよ」
「わかってるのだ。早くいくのだ」
ここは『アルベール』という街らしい。街の中はたくさんの人でにぎわっていた。異世界というだけあって、見たことないものだらけだ。
さて、とりあえず職を探さないといけないわけだが、誰に聞くか…
ヒュー…カンッ!
「痛っ!」
何でたらいが降ってきたんだ?
あれ、マルは?マルがいない!
「これおいしそうなのだ!」
気づいたらマルは少し離れた屋台の串焼きの前にいた。
「お前何してんだよ!」
全速力で走り寄って頭をひっぱたいた。
「なにするのだ!」
「『なにするのだ!』じゃないだろ!俺とお前が離れたらどうなるか忘れたのか!二度と離れるんじゃねえ!あいてっ!」
またたらいが落ちてきた。そういえば危害を加えるとだめなんだっけ。
「はっはっはっ!ざまあみろなのだ!」
くそっ、もううんざりだ。誰かこの腕輪を外してくれ!
「あらあら、仲良しね」
屋台のおばさんがニコニコしながらこっちを見ていた。
「すみません、店の前で騒いじゃって…」
「いいのよ、子供は元気なのが一番よ」
「子供じゃないのだ。吾輩は立派な大人なのだ」
おばさんに向かって怒るが、おばさんは変わらずニコニコしている。
「ちょっと聞きたいことがあるんですけど、仕事を探すのってどうしたらいいですか?」
「それならこの先にあるギルドに行けばいろんな仕事を紹介してくれるわよ。建物が他よりも大きいからすぐにわかると思うわ」
ギルドってアニメとかでよく見る討伐クエストとか採取クエストとかがあるギルドか?
ちょっと面白そうだ。
「ありがとうございます、行ってみます」
「えぇ、頑張ってね」
「あっちにもおいしそうなのがあるのだ!」
「ちょっと待てぃ!」
俺はマルと手をつないでまっすぐギルドに向かった。これじゃどっちが主人なのかわからないぞ。
心なしか少し楽しんでるように見える。まんま子供じゃねえか。
ギルドには屈強そうな人たちばかりだった。なんか俺たちが場違いな感じがして入っていくのが気まずくなってくる。
やっぱり別の仕事を探しに行こう。よし、そうしよう。
引き返そうとすると、マルが堂々と入っていった。仕方なく後についていく。
じろじろ見られてる気がする。だめだ、目を合わせるな。俺も堂々としたまま受付のカウンターに向かった。
「いらっしゃいませ。どうかなさいましたか?」
「仕事を探しているんですけど、俺たちにできる仕事ってありますか?」
「仕事をお探しなら会員証を作って冒険者になっていただくと探しやすいですよ。どなたでも作ることができますし、実力に応じてランクが付くのでお仕事を探す目安になります」
「じゃあ、俺とこいつの二人分お願いします」
こうして俺たちは会員証を作るための書類を書き、会員証をもらうことができた。
ランクにはビギナー、アイアン、ブロンズ、シルバー、ゴールド、ダイヤモンドとなっている。
その中でも、一握りしか存在しないレジェンドというものもあるらしい。まあ、俺たちには関係ない話だ。もちろん俺たちはビギナー。
これでお金には困らないだろう。
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