第2話 召喚は失敗?なのだ!
なんで何も起きないんだ?さっきまでたらいが降ってきたり電流が流れたりしたのに…もう一回やってみるか。
「誰がお前なんかに従うかよ、バーカ」
…やっぱり無反応だ。どうなってるんだ?
「やっぱりおかしいのだ。もしかして壊れたのだ?」
壊れた?ということはもう命令に従う必要はないみたいだな。
「残念だったな、じゃあ俺は自由にさせてもらうぜ」
「そんな…ちょ、ちょっと待つのだ」
早くこんなところ出ていこう。帰り方は分かんないけど、せっかく異世界に来たんだ。楽しんでいこう。
新しい人生の始まりに向かって一歩踏み出す。
ヒュー…カンッ!
「痛っ!」
いや壊れてないんかい!なんだよ!
「どうなってるのだ?ちゃんと教えてもらった通りにやったのだ。もうわけわかんないから聞きに行くのだ。お前もついてくるのだ。ところでお前、名前は?」
「
「よし、ユウ、こっちに家までの転移魔法があるからそれで帰るのだ」
どうやら離れられない命令は機能しているらしい。付いていくしか選択肢がない。俺は地獄の始まりに向かって一歩を踏み出す。
奥のほうに淡く光っている魔法陣がある。二人で魔法陣の中に入ると淡く光っていた光が強くなり、俺達を包んでいく。
光が弱くなり周りの景色が見えるようになる。そこは木漏れ日が差しこんでいる森だった。離れたところに少し大きめの小屋がある。
「すごいな、これもお前の魔法なのか?」
「お前じゃないのだ。マルリル・ライネスなのだ。主に対して無礼なのだ」
不服そうにほっぺを膨らませる。
「お前が魔族だろうが何だろうが子供の下につく気はない。見た感じ六歳ぐらいだろ」
「六歳じゃないのだ、十八歳なのだ」
「それで十八歳?だとしても俺の二つ下じゃないか。無礼も何もないだろ」
「くっ…それでも主は吾輩なのだ。名前ぐらいはちゃんと呼ぶのだ」
めんどくさいやつだな。マルリル・ライネスだったか?
「じゃあ、マルだな」
「マルリルなのだ。それと最後に様をつけるのだ」
「名前を覚えるのは得意じゃないし、呼びにくいからマルだ。どうせお前には強制することができないだろ。何と言おうとこれでいかせてもらう」
マルは何か言いたげだったが、あきらめて小屋のドアに手をかけた。
「ただいまー、なのだ!」
「おかえりなさいませ、お嬢様」
中に入ると、メイド服を着た人が出迎えた。左手首に俺と似たような腕輪がついている。この人もこいつの下僕なのか?
「紹介するのだ。こいつが今日から吾輩の下僕になるユウだ」
「初めまして、私はお嬢様のお世話係のルイス・ライトフィールと申します」
「ど、どうも…」
この人がこいつのお世話係か。こんな奴のお世話なんて大変だな。
ていうかお世話係がいるってことは貴族じゃん。何でこんなみすぼらしい服着てるんだ?
「聞いてほしいのだ。召喚はできたけど命令が効かないし、思ってたのと違うやつが召喚されたのだ」
「確かにお嬢様が仰られていたような方とは違うようですね。魔法陣は教えた通りに描きましたか?」
「もちろんなのだ。ちゃんとこうやって描いたのだ」
マルは机の上にあった紙に召喚された時の魔法陣を描いて見せた。
「これは…違いますね。大きな間違いはないですが所々欠けていたり違う模様を描いていたりしてますね」
間違ってんじゃねえか!こんな奴が俺の主になるのかよ。
それにしてもこの人すぐに違いが分かったな。正直俺にはどこが違うのかわからない。
「おそらくそれのせいで魔力の伝達がうまくいっておらず、命令の追加と取り消し、腕輪の取り外しが不可能になっています」
「あなたが魔法を教えてるんですか?すごいですね」
「もちろんです。私は魔法を得意とするエルフですから」
「だったら、俺を元に戻すことも…」
「それはできません。間違った召喚をしてしまったので下手に帰そうとすると何が起こるかわかりません。別の世界に送られるか、世界の狭間に取り残されるか」
少し期待したけどダメだったか。じゃあもう元の世界には帰れないのか。別に元の世界に未練があるわけじゃないけど、ゲームとかできなくなるのは嫌だな。
「とにかく、召喚自体は成功ということで、これからお嬢様の事をよろしくお願いします。お嬢様を立派な魔王にしてあげてください」
「ちょっと待ってください!俺はこいつを魔王にするほどの力はないし、ただの人間なんだからどうすることもできないですよ!むしろ足手まといになる」
このままじゃ本当にこいつの下僕として暮らさなきゃいけなくなる。何とか引き留めないと。
「確かにあなたは何の力もないただの人間です。ただ、召喚の儀式は召喚者の望んだ者が召喚されます。つまり、お嬢様が望んだ条件に合っていたのがあなたなのです」
「こいつが望んだ条件って魔王に近いやつってことでしょ?俺はただ魔王って書かれた変な服を着ているだけですよ」
「それもあるかもしれませんが、あなたはお嬢様の望んだ通りの人物ですよ。そのようなオーラが出ています」
ルイスさんはまじまじと俺を見ながらそう答えた。俺がこいつの望んだ人物?全然違うけどな…
「では私はこれで失礼します」
「え?ルイスさん、マルの下僕じゃないの?」
「ルイスはお父様の僕なのだ。だからここにはいられないのだ」
「それではお元気で」
行ってしまった…
これからこの生意気な奴と二人で生活するのか?きつすぎるんだが…
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