6章 姫さま、ネクロマンサーに会ったってよ

第66話 姫さま、今後の方針を伝える

 アニキがどこにいて何をしているのかを知るため、俺たちは再度ギルドに向かった。

「アニキの動向はまだつかめないのか?」

 ギルドマスターに尋ねると、困った顔でうなずかれた。

「仲間と合流するまではギルドに寄るつもりがねーんじゃねぇか? アニキはソロでの討伐を受けることなんてねーし、仲間のいるところがわかってんならまっすぐ向かうだろ」

 ごもっともだ……。

 アニキだって、まさか仲間が殺られるようなことがあるなんて思いもしないだろう。

 アレは規格外の敵だ。

 魔術無効なんて神話の生き物かよ、ってのが出てこなきゃ殺られる道理はない。……って考えてたときにハッと気付いた。


 …………最初に俺が戦っていた異形って、物理無効だったとかなのか!?

 勇者の剣だから斬れたってか!?


 ……でも、回復担当と飛び道具担当側からは斬れたよな。いや、もしかして……連中はそういう仕様なのか? アイツは物理担当ではなく、物理無効化担当で、だからいちいち俺の方を向いて剣を受け止めていたのか?


 いや、いまさら考えてもしかたがない。もう倒したし。

 ――ただ、悲観しているよりは絶望的な状況じゃないかもしれないと思い直した。

 物理無効はやっかいだが、もっと言うなら物理無効でも勇者の剣は斬れるんだ。ほんの少しずつだけどな!

 物理担当改め無効化担当は焦っただろう。だから途中で動きがおかしくなったのか。

 たぶん、もっと気合いを入れればもっと斬れたのかもしれない。

 というか、アニキが使ったら斬れたかも……。アニキ、俺と同じ大剣使いみたいなガタイのわりに、武器ならなんでも使いこなせるんだよな……。まさに勇者の供にふさわしいような器用さを持っていて――。

 って考えたら気合いが入った。

「殺ってやるぞゴラァ!!」

 アニキの方が使えるってんで勇者の剣を取り上げられたら嫌だ。俺の腕に巻きついている寄生型魔物なら喜んでプレゼントしたい。


 俺が急に叫んだので周りが驚いている。

 姫さまも驚いたらしく目をパチパチと瞬かせたが、うれしそうにうなずいた。

「そうだな! 二人で魔王をやっつけるぞアルジャン!」

 そう言うと小さな手のひらで俺をぺちぺち叩いた。

 あ、違います姫さま。そういう意味じゃありません。


 ギルドに、『三面六臂の魔物を見かけたらまずギルドに知らせること、無理に倒そうとしない』の、周知を徹底してもらうよう念押しして、ギルドを出た。

 当面は知らせを受けて駆けつける方針でいく。やみくもに駆け回っても見つからないだろうし。


 そうなると……。

「さて姫さま。今後はどうするんですか?」

 魔王を封印しに行くか、魔王種を駆逐するために動くか。あ、勇者の供を探すってのもあったか。その辺かな。

 俺が尋ねると姫さまは指を一本立てた。

「魔王種の浄化はおにいたちに任せることにした。アルジャンの言うとおりパパに手紙を書いて相談したら、おにいたちでも浄化の珠が使えることがわかったのだ!」

 俺は軽く目を見開いた。

 姫さまは異形討伐を優先するかと思ったからだ。意外だった……というより、姫さまの判断を見くびってたわ。

「なので、魔王のところに行く。途中で勇者の供の子孫に会って、ちゃんと戦え、って言う。バジルだけじゃなく、他の連中も代替わりしたら、いつの間にか戦うことを辞めてる。勇者の武器を正しく伝えていないし、回収するか戦うかの選択をしてもらう」

 姫さまかビシッと言った。

 確かにその通りだ。


 辺境伯の一族は勇者の武器やそれを使える者の条件を忘れていて、それどころかないがしろにしていた。


 バジルは錬金術を続けていたが魔物の駆除に対しては積極的じゃなかった。


 今この時にやっておくべきだ。

「では、参りましょう姫さま」

「うむ!」

 俺が声をかけると、姫さまが元気よくおっさん返事をした。

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