第62話 護衛騎士、異形と殺り合う(ただし一方的に)
そのまま異形の調査を続行した。
怪しげな気配があったら姫さまが見つけるだろう。
姫さまは、何気に探知能力に長けている。斥候タイプだ。俊敏だし、このまま育てばいい冒険者になれるだろうが……。
なんせ姫さまは王女だ。
王女が斥候やるなんてあり得ないからな。
そう考えながら歩いていたら、姫さまが反応した。
俺は素早く姫さまをかばう。
「姫さま、身代わり人形の用意を。……見つかる前に一撃入れてきます」
姫さまはうなずくと、俺に目くらましの札を貼った。 そして、籠に盛った人形を出した。
よし。
俺は姫さまを見てうなずいた後、姫さまの視線の先に走っていくと……いた!
……ん?
なんか、前回殺り合った奴よりも小さいな。
それに、武器が違ってないか……?
違和感を感じつつも走りより、こっちに気づいてないのを幸いに至近距離から勇者の剣を振り抜いた。
…………真っ二つに斬れた。
「えぇー……」
どういうことだよ?
異形の下半身はピクリともしないが、上半身はまだもがいている。
頭か心臓を潰すかな、と思っていたが、ドロリ、と傷口から大量に血液らしき何かが流れ出たと思ったら急に動かなくなった。
うーん、謎の生態だ。
だが、横真っ二つでも死ぬのはわかった。
「アルジャン、やったか?」
姫さまが籠を抱えてやってきた。
「姫さま」
俺は振り向くと、ちょっと身体をずらして死体を見せた。
「どうも、先日戦った個体とは違うようですね……。いくら不意打ちに弱いとはいえ、前回の異形なら真っ二つにはならないでしょう」
姫さまは俺に籠を押しつけるとしげしげと死体を眺めた。
「人間みたいな個体差があるんじゃないか? そもそも武器を使ったり魔法を使ったりするのって人に近いよな」
確かに、と姫さまの意見にうなずいた。
異形の死体をアイテムボックスに放り込み、異形を探す。
姫さまが「こっちにいそうな気がする」というのでついていくと、お見事と言いたくなるほどに彷徨っている異形を見つける。
その結果、合計五体の異形を仕留めた。
歩き回っていたら、最終的に魔王種を見つけた。
姫さまが浄化の珠を投げつけて消し去り、
「戻ってくるか待ってみよう」
と、その場で待機していたら戻ってきた一体を姫さまが魔法銃で頭と心臓をすべて正確に撃ち抜いて死亡させた。
前回では絶対に考えられないほどの弱さだ。
「うーん、どうしたんでしょうか。拍子抜けするくらいに弱い個体ばかりですね。こんなのに連中が殺されたとは思えないのですが……」
俺が疑問をつぶやくと、姫さまが首をかしげた。
「前に戦ったくらいに強い奴と戦ったんじゃないか? あんな激しい戦闘をしていたら、異形のほうも無事じゃないだろう。相討ちか、深手を負って魔王種の中に戻ったのかもしれん」
姫さまの意見に驚いた。
「……なるほど。確かにそうかもしれませんね」
なら、浄化したからもう出てこれないな。出てこないといいな。
しばらく待ってももう来ないし、この程度ならAランク冒険者でなくてもやっつけられそうなため、いったん引き上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます