第17話 簒奪者
メグが何かを竜人に向かって投げつけた。
その次の瞬間、竜人を大爆発が襲う。
「何だ? 爆弾か??!」
誘爆を警戒するオレを尻目に
「まさか。ただの上等な
メグはニヤリと笑ってそう言うと、
「今です!!」
そう、ユーリとクローディアに向かい叫んだ。
メグの声にハッとしたようにクローディアが風の翼を作り出し、それを纏ったユーリが空中に踊り出ると竜人に向かい剣を振りかぶる。
「おのれ小癪な!!!」
火だるまになりつつ、竜人が叫び再びユーリに向かいブレスを放とうと大きく息を吸い込んだ。
しかし自身が燃えているせいで上手く空気を取り込めず、それが放たれる事は無い。
「小賢しい人間どもめ! すぐにこの俺様を怒らせた事を地獄のそこで後悔させてやる!!」
ユーリの攻撃をその身に受けながらも辛うじて致命傷を避けた竜人は、そんな捨て台詞を残し今度こそどこかに去って行った。
******
「さ~て、事情を聞かせてもらいましょうか?」
森に出来た洞窟の中、メグに優しく促されアルルがこれまでの経緯について話始めた。
「あの赤髪の竜人は……私の叔父であり、私の父を殺した今の竜帝です。お母様……じゃなかった、母は本来次の竜帝となるはずだった私を守る為、危険を承知で私を連れて竜の国を出て人間の街の近くで二人でひっそり暮らしていたのですが……。私がうっかりあの商人の仕掛けた罠にかかってしまって……」
アルルの話によると、元々マデレイネと現竜帝は恋仲であったのだとか。
しかし、政略結婚によりマデレイネと現竜帝の淡い恋は終わりを迎えた。
……少なくとも、マデレイネはそう思っていたのだとか。
「つまり、あの赤髪は簒奪者という事か。ハルト、どうする?」
ユーリの問いにオレは黙って思案した。
俺達の悲願は魔王討伐。
竜族を、ましてや竜帝を相手にする余力は無い。
しかし……
「アルルはこれからどうしたい?」
オレの問いに
「私……私は……王位とかどうでもいいから、だから……だからこれからもお母様と一緒に暮らしたい」
アルルがこれまで堪えていたのであろう涙をポロポロ零しながらそう答えた。
「分かった、オレが必ずアルルがマデレイネとまた暮らせるようにして見せる。約束する!!」
オレの言葉に
「ハルトならそう言うと思った」
「悪いドラゴン退治、英雄譚の定番ですもんね!」
「まぁ何とかなるでしょ~」
「魔王討伐を目指すんだ、竜帝の一匹や二匹、僕達にかかればさしたる問題じゃないさ」
皆、アルルに優しい眼差しを向けながら、無謀を承知でそう同意してくれた。
「みなさん……ありがとう……ありがとうございます!!」
ポロポロと綺麗な涙を零してオレの腕に飛び込んできたアルルを抱き上げ
「よし! そうと決まれば、明日からに備え今日はみんなで上手い物でも食おう!!」
そう右手の拳を洞窟の天井に向けて突き上げ、馬鹿みたいに大きな声でそう宣言すれば
「「「「賛成!!!!!」」」」
そんなオレのカラ元気を組んだ皆が、そう言いながらオレに合わせ銘々その手を高く上げて、年相応の少女らしく飛び跳ねてみせた。
さて、明日への英気を養う為、何を食おうか。
「アルルは何が好き? 嫌いなものとかある??」
リリアの問いかけに、アルルが元気に答えた。
「はい、完全に炭化した物や毒性の強い物はちょっと苦手ですが、それ以外は何でも好きです!!」
えっと??
竜人は人間と同じような食文化を持つと聞いた事があったのだが……。
仮にも先代の竜帝が娘、やはりオレ達庶民とは口にするものが違うのだろうか??
「ほら、ソテーよりシチューの方が好きとか、キッシュよりパイ料理の方が好きとかそういうのは?」
アルルと同じく王族のクローディアのフォローに
「そてー???」
アルルが不思議そうに首を傾げます。
「アルルは普段何を食べてたんだ?」
ユーリの言葉に
「はい、普段は森や川で掴まえた獲物をブレスで炙ったものを食べてました!!」
アルルが元気いっぱい、嬉しそうに答える。
「調味料とかは? 味付けはどうしてたんですか~?」
メグの質問に、アルルが
『チョウミリョウ、何ソレ美味シイノ??』
という顔をしていて、あまりに不憫になったので
『そうだな美味いよ』
と、とりあえず頭を撫でておき。
オレは、今ある食材で出来る一番美味い料理を、アルルに振る舞う事に決めた。
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