第5話 部屋割りはくじ引きで
「ハルト! ボクが悪かった。これまでのことは全て謝るから、だから……どうか、またボクをお前の仲間にしてくれないか?!」
勇者であるユーリからパーティーを追放された数日後。
どういう訳か、オレを追放したユーリ自身からそんな事を言われた。
おそらくオレに同情してリリア、クローディアそしてメグが同時にパーティーを去ってしまったので、ユーリだけではどうにもならなくなったのだろう。
何を勝手な事を……。
そう憤り、オレのシャツの端を掴んだ、その手を振り解こうとした時だった。
ユーリの、勇者と呼ぶにはあまりに小さなその手が微かに震えている事に気づいてしまった。
あの日ユーリに追放を言い渡されたオレ同様、仲間だと思っていた皆から一方的に分かれを告げられたユーリもまた、酷く傷ついたのだろう。
ましてユーリはオレよりもずっと年下の、声変わりもしていないような少年なのだ。
きっと急に一人になってしまいオレ以上に、心細い思いをしたに違いない。
そう、気づいてしまえばもうざまぁないなとか、そんな風には思えなくなって。
「あぁ、もちろん。これからもよろしく、ユーリ」
そう言って、ユーリが持つには重すぎる、まるでユーリが無理やり背負わされている重責の象徴のようなその盾をいつもの様に持ってやれば。
ユーリはその澄んだ青空の様な瞳をパッと輝かせ、嬉しそうにオレのシャツの裾を掴んだまま、またオレの横をやや小走りに歩き出したのだった。
******
その翌日、オレ達は次の村に辿り着いた。
いつも通り、各自一室ずつ部屋を取ろうとした時だった。
宿の店主から小さな村の宿ゆえ、生憎あるのは三部屋のみ、おまけにどれも二人部屋だと言われてしまった。
しかもベッドは各部屋に一台のみとのこと。
店主は勇者ユーリの名を聞いて個室が無い事を申し訳なさそうにしていたが、野宿続きだったオレ達からすれば、湯を仕えて暖かなベッドの中で眠れるだけでありがたい。
店主から鍵を受け取り
「ユーリ、行くぞ」
とユーリに声をかけた時だった。
「「「えっ??!」」」
リリア、クローディア、メグが声をハモらせ、驚いたようにその目を見開いて見せた。
ユーリとオレの男同士を同室にして、あと二部屋をリリア、クローディア、メグの二人でいいように振り分けてもらうのが無難だと思ったのだが。
何か違っただろうか?
不思議に思いユーリを見れば。
オレと同じベッドで寝るのがそんなにも嫌なのか、その耳を良く熟れたベリーのように真っ赤にして俯いている。
「……えっと、部屋割りを考える前にみんなお腹ペコペコだから、まずは食事にしましょう!」
そんなユーリを気遣って、しっかり者で気配り上手なリリアが、そんな事を言った。
言われてみれば、宿の一階にある食堂から食欲を刺激する良い匂いが漂ってきている。
「えぇ、それがいいですね。そうしましょう!!」
そんなリリアに合わせるように、クローディアが二階に上がるなりオレと同じ部屋に自身の荷物を半ば放り投げるように置きドアに鍵をかけると、皆を下へと急かした。
******
この食堂の名物はシチューだそうで。
新鮮なミルクと、とれたての野菜がたっぷりと入ったスープは素朴でありながら、ホッとする温かさに溢れていた。
『さて、また明日からの旅に備えて湯あみを済ませたら早く休もう』
そう思い皆に声をかければ……。
まだまだ不本意そうに俯くユーリを気遣ってなのか。
「先輩、お風呂お先にどうぞ~」
メグがそう言って、体良く一度オレをその場から追いやった。
髪を拭きながら。
結局皆が揃って荷物を置いた部屋に戻り、いい加減自分とユーリの荷物を持って他の部屋に移ろうとした時だ。
「あのね、ハルト。皆で話し合ったんだけど……部屋割りは思い切って恨みっこなしのくじ引きにしましょう!」
リリアがそう言って、五本の紐をぐいとオレの前に突き出した。
散々四人で話し合った結果、平等にくじで部屋を決めようとの話になったらしい。
何故かメグが宿の中だと言うのに愛用の杖を持っており、ユーリが口を閉じたままうーうー言っているのが少し気になるが……。
一番の年少者であるユーリ一人に不本意な思いを強いる事も憚られたので。
オレは皆が決めたことならばと、その提案を受け入れる事にした。
そうして公平なるくじ引きの結果――
一人部屋はリリア。
そしてユーリとメグ、オレとクローディアがそれぞれ同室という結果となった。
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続き気にしていただけたのが嬉しくて、続き書いてみました。
思い切り見切り発車の為、亀更新になるかと思いますが、ゆる~く楽しんでいただければ幸いです(*´▽`*)
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