Ⅳ
礼拝堂に足を踏み入れるや、アラスターは中に居た村人たち取り囲まれる。彼を知る者は再会を喜び、悪魔退治の物語を聞いて育った世代の者は、尊敬の眼差しを彼に向けた。
「皆、無事でなによりだ。悪魔は手強い相手だが、私が奴の眼を射抜き、この剣でとどめを刺してやる。三十年前と同じようにな」
アラスターが高らかに宣言し、剣を抜き放って掲げてみせる。村人たちは揃って拍手喝采し、村に舞い戻った英雄を称えた。
礼拝堂が希望に満ち溢れる中、丁寧なノックとともに、純白の法衣を纏い、フードを被った司祭が四人現れる。司祭たちの法衣には、彼らが祓魔師であることを示す聖印の刺繍が、金糸で施されていた。司祭のひとりが村人たちに向けて一礼し、フードを取る。編まれた真珠色の長髪が露わになり、その髪の輝きの神々しさに、何人かの信心深い村人は思わず頭を垂れた。
「わたしの名はエマニュエル。聖都直属の祓魔師です。皆さまの要請に応え、悪魔を祓いに参りました」
エマニュエルが自己紹介をし、再び一礼する。まるで神の遣いであるかのようなその姿に、村人たちは皆、目を奪われていた。
「これで俺たちは助かるぞ!」
「エマニュエル様はまさに、創造主が送り出した救世主ね!」
「創造主を讃えよ!」
老若男女、すべての口から希望の言葉が、創造主への讃美が出る。
「なんて清らかな神のしもべ……まるでオーガスト様のようだ」
誰かの口から、そんな言葉が漏れた。
「……今、どなたかオーガストと仰いましたか?」
エマニュエルの顔がほんの一瞬、強張る。
「祓魔師様、オーガスト神父をご存知なんですか?」
エマニュエルの表情の変化に気付いた村人が尋ねると、エマニュエルは柔らかく微笑み、頷いた。
「えぇ。過去に同じ教区で奉仕をしておりました……せっかくなので挨拶がしたいのですが、オーガストさまはどちらに?」
「オーガスト様なら、今は私室でお祈りしてると思いますよ」
オーガストの居場所を聞くと、エマニュエルは他の祓魔師たちに待機するよう指示し、足早に教会の居住区へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます