礼拝堂に足を踏み入れるや、アラスターは中に居た村人たち取り囲まれる。彼を知る者は再会を喜び、悪魔退治の物語を聞いて育った世代の者は、尊敬の眼差しを彼に向けた。

「皆、無事でなによりだ。悪魔は手強い相手だが、私が奴の眼を射抜き、この剣でとどめを刺してやる。三十年前と同じようにな」

 アラスターが高らかに宣言し、剣を抜き放って掲げてみせる。村人たちは揃って拍手喝采し、村に舞い戻った英雄を称えた。

 礼拝堂が希望に満ち溢れる中、丁寧なノックとともに、純白の法衣を纏い、フードを被った司祭が四人現れる。司祭たちの法衣には、彼らが祓魔師であることを示す聖印の刺繍が、金糸で施されていた。司祭のひとりが村人たちに向けて一礼し、フードを取る。編まれた真珠色の長髪が露わになり、その髪の輝きの神々しさに、何人かの信心深い村人は思わず頭を垂れた。

「わたしの名はエマニュエル。聖都直属の祓魔師です。皆さまの要請に応え、悪魔を祓いに参りました」

 エマニュエルが自己紹介をし、再び一礼する。まるで神の遣いであるかのようなその姿に、村人たちは皆、目を奪われていた。

「これで俺たちは助かるぞ!」

「エマニュエル様はまさに、創造主が送り出した救世主ね!」

「創造主を讃えよ!」

 老若男女、すべての口から希望の言葉が、創造主への讃美が出る。

「なんて清らかな神のしもべ……まるでオーガスト様のようだ」

 誰かの口から、そんな言葉が漏れた。

「……今、どなたかオーガストと仰いましたか?」

 エマニュエルの顔がほんの一瞬、強張る。

「祓魔師様、オーガスト神父をご存知なんですか?」

 エマニュエルの表情の変化に気付いた村人が尋ねると、エマニュエルは柔らかく微笑み、頷いた。

「えぇ。過去に同じ教区で奉仕をしておりました……せっかくなので挨拶がしたいのですが、オーガストさまはどちらに?」

「オーガスト様なら、今は私室でお祈りしてると思いますよ」

 オーガストの居場所を聞くと、エマニュエルは他の祓魔師たちに待機するよう指示し、足早に教会の居住区へと向かった。

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