裏切り者

夜の八時、突如関武連合の幹部達が会の本拠地である屋敷に呼び出された、関武連合の屋敷は東京からは少しはなれた県外の住宅地の一棟に置かれている、次々と車が入り口の門まで入ってきてた、「ご苦労様です!」屋敷で勤める若い組員達は門の入り口に真っ直ぐ並び込み幹部達を出迎えた、その組員達の中にも神田組の者が何人かいた、

「突然の会合申し訳ない、まずは突然の先代の蛯沢会長がお亡くなりになり、これからこの関武連合は新体制を造り上げていかなければならない」 名だたる幹部達が畳に居座る会合の前で神田は指揮した、神田は二代目を継承したかのように堂々と幹部の前に立ちすくした、「この関武連合、益々力を上げていくために古臭いヤクザの考え方を持った奴はどんどん消していく、皆その意識を持ってこの組織を盛り上げてくれ」神田は鋭い視線を幹部達に送った、皆が未だ経験の短い若い組員だった神田を気にくわない人物も中にはいた、そう言う奴らは神田を見ずにタバコを吹かして話を聞きそらしたりした、「チッと、ええですか?」急に突然話をし始めた男が畳から立ち上がった、神田はすぐに応えた、「何か疑問でも?」 するとその男は加えてたタバコを吹かしながら神田のもとへと歩いてきた、その男の目付きは明らかに神田を敵対しているとすぐに神田は察知した、「白岩組若頭の渡部言います、どうやら二代目は未だやり残しとる仕事があるみたいですが」 渡部は口調を荒々しく話ながら神田に近付くと、後ろから、おそらく渡部の部下であろう2人の組員がついてきた、「例の先代が最後にやり残しとったチャイニーズマフィアとの協同組合を造り上げる計画は会長に付くとなるなら二代目!、どないしましょう!」渡部は神田を睨み付け強く問いかけた、神田の横に座る東條は前に置かれているテーブルに肘をつけ、渡部を制止しようと訴え掛けるが、渡部の組は東條が指揮している白岩組の人間だ、おそらく東條が指示したのだろうと神田は察知した、「マフィアとの件はもうじき完了する、今内の若い衆が動いてる、心配する必要はない」神田は渡部の顔を見ることなく応えた、場が悪くなっている状況を神田の側にいた獅子神が立ち上がり、幹部達を鼓舞した、「どうか二代目の神田をよろしく頼む」獅子神の言葉で頷く幹部の人間がいた、獅子神は関武連合の設立からずっと蛯沢の元で動いてきた、その力は神田よりも高いのは誰もがわかることだった、しかし蛯沢はそんな獅子神を見捨て旧組員の人間、神田を二代目に就かせたのだ、その後会合は終わり次々と屋敷を出ていく組員達、旧白岩組の東條や組員達は神田を睨みつけながら浮かない顔で外の車に乗り込み去っていった、しばらくして幹部達がいなくなると神田は会合をしていた広い和式の部屋を出た廊下のすぐ横の個室にいる松岡や大川達の元へ向かった、個室のドアを開けるとタバコを吹かして雑談を楽しんでいる松岡達を見た、「! 、 お疲れ様です」 慌ててタバコを消しているその景色に思わず緊張が解けたのか神田は笑みを浮かべた、「まったく、これからの組織を盛り上げるつもりが、古臭い白岩の極道が鬱陶しいな」神田は笑いながら話した、「あの東條、渡部はまだ侮れないですね、しばらく見張りが必要かも」 「そうだな」神田も個室のテーブルに置かれていたタバコを手に取りライターに火をつけた、神田のタバコを吹かした煙は凄まじかった、すると個室のドアからノックする音が聞こえた、すぐに近くにいた大川がドアを開けると驚いた表情を見せた、部屋に入ってきたのは獅子神だった、「神田ちょっと話がある、来てくれ?」




その頃壮真ともう一人前田は、チャイニーズマフィアとの取引場所の港へと到着しようとしていた、「金は用意してあるよな?」壮真は不安げに問いかけた、「えぇ、それにしてもどんな奴らなんでしょうね」ワゴン車は明かりの少ない道路に車を走らせる、すると前の方に微かに明かりが灯されている地点を見つけた、そこに近付くとやはりマフィアが何人かそこで待っていた、ワゴン車はマフィア達の前に着くと車を止め、すぐに二人は大金の詰まったバックを取り出すと車から降り彼らの方へと歩いいた、「レイの物 ワタセ」マフィア達の先頭に立っていた男は二人が近付くとすぐに話しかけてきた、その男は高級そうなスーツを身に纏い鋭い眼光を二人に睨みつかせている、すぐにその男がマフィアを指揮している人物だと壮真はきずいた、「金は用意してある、これだ」前田は大金を入れたバックをその男の前に置いた、「薬はどこにある?」すると後ろに睨みをつかせ腰に刀を所持していた女がデカイケースを持って壮真の前へとケース置いた、壮真はすかさずケースを見てみると袋詰めにされた薬物が満杯に入っていた、「おぉ!こりゃたまげた」 、余りの量に壮真は驚きを隠せなかった、ふと目線を男の顔に上げると男はニヤリと笑っていた、「コウショウセイリツだな」壮真も男に笑みを見せた、交渉が終わると二人はすかさず重いケースを二人がかりで持ち上げワゴン車の後ろに置いた、「壮真さん、これは組が喜びますね!例のマフィアとも上手くやっていけるんじゃ」 「あぁ、そうだな」前田は大量の薬物を前にとても興奮した表情を見せている、やがてケースを入れ又車を走らせ、窓を見てみるとさっきの男が何人かの部下をつれて大金を持ち運んでいる姿が見えた、ワゴン車は数分後港を出て一般道路へと乗り込んだ、ハンドルを握る壮真の手には冷や汗が流れている、ふと助手席の前田を見るとニヤケた顔をしていた、これから何を仕出かそうとするのか前田は知らない。




夜の八時半、獅子神は神田を連れて屋敷の外へ出ていった、神田は疑問を浮かべながらも信用する獅子神の背中を追った、やがて神田のよく使うBMWの車を止めた駐車場へと着いた、「兄貴、運転は内の大川がやりますよ」そう言うと獅子神は遠慮するが神田はかたくなに大川に運転を任せた、大川はハンドルを握り後部座席に座る二人の方を微かに振り向き行き先を問いかける、獅子神は海沿いの方へ向かってくれと伝えた、大川はエンジンをつけ車を走らせた、運転する間妙な緊張が大川を押し寄せた、「兄貴話というのは?」 すると獅子神は神田の方を振り向いた、「蛯沢はお前に関武連合を継いで俺に託してくれと言われた、この先勢力を上げるには邪魔な奴を排除するのが何より一番の方法だ、そうだろ神田会長」 「えぇ、まさに今日の会合の時の東條や旧白岩組の人間達の事ですか」車内は不思議な空間に包まれている、「俺はずっと関武連合がでかくなる前から蛯沢の元で働いてきた、それはどんな汚い仕事であっても、ずっと会長の為に手を汚してきた」神田は話す獅子神の顔を見てると目付きがだんだんとさっきとは全く違う強い目付きで外を見ているのに不審に感じ始めた、「だがどうやら蛯沢は、任せる人間を間違えたようだな、」すると胸元に手を入れ拳銃を取り出した、「え?獅子神さ、」 突然獅子神の前で運転する大川の座席に向けて一発発砲した、「バーーン!」大川は後頭部を撃たれハンドルの方へと倒れ込んだ、「よせー!」咄嗟に神田は獅子神の手に持つ拳銃を奪おうと手を抑えつけようとするが、又一発、弾が暴発した、弾は神田の膝元に銃弾が通り神田は思わず悶えた、「痛い痛い痛い!あーー!」獅子神は焦りながら拳銃を持つ腕を神田の握る手から引き離した、出血する膝を手で抑えながら強く叫んだ「兄貴、どうして!」 獅子神は泣きながら訴えかける神田を見つめた、「後の関武連合は任せとけ、じゃあな神田」 銃口を神田の頭に構えた、神田は必死に首を振りやめろと叫ぶが、その時獅子神の拳銃は引き金を引いた、車内はデカイ銃声が鳴り響いた、すると車は近くの電柱へと衝突していった。






壮真は握るハンドルに手汗がべっとりとついているのに気がついた、思わず息を飲み込んだ、意を決したかのようにワゴン車は走る道路の反対車線へと曲がった、「何してんすか?事務所はこのまま行けばありますって」前田は急な進路変更に動揺した、壮真は咄嗟に大きく息を吐くと前田の方へ振り向いた、「わりぃな」そう言うと壮真は前田のシートベルトを外し車の速度をもうスピードで上げたた、おもわず前田は体を前のフロントに打ち付けた、すると壮真は急にブレーキを押し前に倒れ込む前田は後ろに体を打ち付けた、その行為を壮真は何度も繰り返した、やがて前田は意識を失い気絶した、壮真は気絶した事を確認すると速度を落とし、人だかりの少ない場所で前田を降ろそうと考えた、



電柱へと衝突していった車は炎上を起こそうとしていた、獅子神はハッと目を覚まし体を痛めながらも何とか車から降りた、そして車から離れた所へと逃げている最中デカイ爆発音が鳴った、しばらく獅子神はその場にると一台の車が獅子神のもとへと走って来て目の前で止まった、車の窓が開き運転席には渡部の姿がいた、そしてその後ろに東條の姿も、「その様子じゃ随分てこずったみたいだな獅子」 後部座席に座っている東條が話しかけてきた、「計画はこれで完了でいいな」獅子神は坦々とした表情へと変わった、「いやまだ厄介なのは、松岡や、あいつは簡単に事故死と理解しないだろう」すると東條は何かを思い付いたかのように車を降り獅子神のもとへ近付いた、「丁度今日、蛯沢の計画を実行してた部下いただろ!名前はなんやけな?」 「交渉に動いてるのは若頭の壮真と前田です」

「そうや!そいつらだ、壮真と前田が裏切りおって自分の組長とお前を殺そうとした事にすればええ」その東條の考えに獅子神は困惑した、「いや、それには無理があるんじゃ?」

獅子神は不安げに応えた、「いや、薬を利益にするために組長を殺し持ち逃げしたと伝えればええ」

その後、獅子神は松岡に連絡を掛けた。

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