29話 文通

リンコは夜勤を終えてどっと疲れが出て

あっという間に眠りについた。


ベニ。

モウ、ナクシタクナイ。

ベニ、マモッテクレ。


ワッカさんなの?

私はワッカさんの生まれ変わりなの?

そんな事あるの?

ねぇ、答えて‼️


あっ、あつい、、。夢だったのね。

喉がカラカラ。


リンコはベットから起き上がり、冷蔵庫のミネラルウォーターを一気に飲んだ。

時計を見ると、夕方の6時だった。


ベランダを開けて夕日を観ながら、

一体、どうしろってのよ!

いくら生まれ変わりだとしてもよ。

相手は中学生よ。

恋人になんかなれやしない。

あー、頭が変になりそう。

リンコは眉間を指でトントンしながら

夢をしっかりと思い出そうとした。


あっ、、。

そうか。

あの言葉。

わかったわ。ワッカさん。

任せておいて下さい。

まだ、就寝時間にはたっぷり時間があるわね。

早速着替えて、自転車走らせるかー!


リンコは整形外科病棟へやって来た。


同期の看護師に見逃してよと頼んで

ガクホとデイルームで話す事ができた。


あのね、ガクホ君、夜勤明けで寝てたの。

そしたら、ワッカさんが出て来たのよ。

ワッカさんね、紅子さんを亡くした事を後悔してるわ。

そしてね、私に紅子さんを守ってほしいと言ったわ。

私、わかったの。

つまり、紅子さんの生まれ変わり逃すガクホ君を守って欲しいって事だとね。


その話に突然、ガクホは大粒の涙を流した。


僕、実はもう生きてても仕方ないような気持ちだったんだ。

片足を無くす、そんなの酷いじゃないか?

なんで僕なんだ!

義足でスポーツ?そんなの嫌だよ。

これから再発やら転移とかってあるみたいだし

ビクビクしながら生きていくのかと思うと、、。


そうよね。ガクホ君。

当たり前なのよ、その気持ち。

ねぇ、ガクホ君、私達も文の交換をしてみない?

石って訳にはいかないから、手紙。

LINEやメールじゃなくて。

どうかな?


えっ、いいの?

嬉しい。

僕、森野さんだけには気持ちが言えるんだ。

手紙、、。年賀状くらいしか書いた事無いけど。やってみたい。


うん!

じゃあ、私の住所を書いておくね。

ガクホ君は、、。

とりあえず、病院宛にするね。

送り主の名前なんだけど、私はワッカ、

神は紅子でいこう。


うん、何だか、楽しい気分になってきた。


さっきまで泣いたカラスはどこに行ったのか?

ガクホは鼻歌なんか歌ってた。








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