27話 愛する人

父親はアイヌのムラオサを訪ねて詳細を話した。


そこにはワッカもいた。


ワッカ、オマエ、ワカルカ?


ハイ。コレカラ、イク。


ソウカ、ワタシタチハ、ヤマヲサガス。

センセイハココニイテクダサイ。

ヨルノヤマアブナイ。


わかりました。ご迷惑をお掛けします。

大切な娘です。

みなさん、お力をお借りします。

そう言って頭を下げた。


ワッカは泉だとわかった。

明日の結婚の事を知ったんだろう。

紅子はきっと石文を残しに行ったのだ。


ワッカは真っ暗闇に松明を持ち駆け出した。


泉に着いたワッカは叫んだ。

ベニ!

ベニーー!

ドコニイルーー!


その声で紅子は気がついた。

ワッカさん、、。


ほんの小さな声だったがワッカにはわかった。

ワッカは古木の下の紅子を見つけた。


ベニ!


ワッカさん、お久しぶりです、、。

会えて良かった。

石文をね、、、。


ワカッタ、モウイイ。

ワッカは紅子の体に積もった雪を払いのけ

持って来た掛け物を掛け抱きしめた。


ワッカさん、あったかい、、。

ありがとう、、。

なんだか、眠たいの。

とてもね、、、。


ベニ、オキロ!

ベニ!ベニーーー!

イヨマッメノコ、、。


紅子は再び目を覚ます事は無かった。


紅子からワッカへの石文には

ワッカさん、あなたを愛しています。

ずっと、これからも。

と残されていた。


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