19話 喪失

紅子は3日も意識が朦朧として、熱も高く

生死をさまよっていた。

ようやく、何か眩しい光を感じて目を覚ました。


あっ紅子、目を覚ましたのね。

お母さんよ、わかる?


ううん、おかあさん、、。


紅子、苦しくないかい?足は痛くないかい?


紅子の意識は徐々に戻ってきた。

お母さん、泣いてる。

ああ、そうよね、心配かけちゃったから。


お母さん、大丈夫。

ごめんなさい。心配かけて。


うん、うん。良かった、良かった。

お父さんに知らせてくるわね。

お父さん、学校があるから休めなくて

きっと校長室で知らせを待ってるわ。


うん。そうして。お父さんにもごめんなさいと伝えてね。


紅子の母親は電話をしに病室を出て行った。


ふぅー。大変な目にあったわ。

熊に襲われるなんて、、。

あ、助けてくれたあの人や家族の人達。

確か、、。ワッカさん。

治ったらお礼に行かなきゃ。

何だか喉が渇いたわ。


紅子はベットの横のテーブルの楽飲みを見つけた。

上体を起こし、楽飲みを取ろうとした瞬間。

自分の体の何かがおかしいと思った。


足、、。どうなったの?


紅子は震える手で布団をめくった。

そこには、あるはずの左足は見当たらない。


嘘、嘘、嘘ーー。

間違いよね、夢よね、そんなはずない!


紅子は錯乱して大声で叫んだ。


その叫び声は病棟中に響き渡った。

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