17話 フレ

ワッカは紅子を背負って走った。

川から向こうは倭人の住むところだ。

ここは昔から、我らの大地だった。

倭人が押し寄せて、いつの間にか、

カムイの住む場所も壊されて行った。


船を漕ぎながら、


あのう、ワッカさんありがとうございました。

貴方がいなかったら私は生きてなかった。


オンナ、ナゼ、ヤマニハイッタ?


祖母の具合が悪くなって、春の柔らかいフキを食べたいと言うのです。

最期に食べさせてあげたくて、、。


アノヤマ、オンナハイッテハイケナイ。

オキテ。オマエ、ヤブッタ。

キムイカムイ、オコッタ。


ごめんなさい。私、知りませんでした。

バチが当たったんだわ。

紅子は泣き崩れた。


オンナ、ナマエアルカ?


はい。紅子です。


ベニコ?


くれない、、、。

あっアカイと言う意味です。


アカ、、。アイスノコトバ、フレ。


フレですか、、。


船は岸辺に着いた。ワッカは紅子を背負い

家まで送った。家の周りはざわついていた。

そこへ紅子を背負ったワッカが現れたので

皆は驚きを隠さなかった。


紅子!!

紅子の母親は血相を変えてやってきた。

きゃ、一体何があったの!!

血だらけじゃないーー。


その叫びに周りの者も気がつき、ワッカから紅子を引き離した。

紅子はあっという間に、家へ連れ去られた。


ワッカは帰ろうと踵を返そうとした時、

待て、君は誰なんだ?

なぜ紅子はあんな姿になったのか、説明してくれないか?

紅子の父親だった。


ワッカはカタコトの倭人の言葉で経緯を話した。


そうか、君がヒグマから助けてくれたのか。

見たところ、アイスの人だね。

どうもありがとう。

本来なら、命の恩人を歓迎したいところだが、

紅子を医者に連れて行かなければならないので

これで失礼させてもらう。

父親はワッカに頭を下げた。


ワッカは静かに去って行った。


ベニコ、フレ、イイヨビナダ。











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