14話目 告知

ガクホの告知の時がやってきた。

場所は病棟の診察室。

折りたたみ椅子を人数分用意した。


担当医の近藤は、

森野ちゃん、気が重いだろ?

やっぱり、大人とは違うよな。

と言った。


はい。正直、記録を入力するだけになりそうです。


いいよ、それでさ。

じゃあ、皆さんをお呼びして。


リンコは言われるままに、ディルームで待っていたガクホと両親に声をかけた。

診察室に入ると、ガクホを医師の近くに誘導した。

後部の2席には父親と母親が座った。

出入り口の隅っこにリンコは座って、電子カルテを膝に乗せた。


近藤医師から

ガクホ君、君の左足の事なんだけどね、

色々な検査をしたよね。


はい。


それで、わかったのは、ユーイング肉腫という出来物が膝にあるってことなんだ。

君の出来物なんだけどね、手術が必要なんだ。


先生、、。それって癌なんですか?


うん、そうなんだ。


僕、死ぬんですか?


いや、そんな事にはならないよ。

ただね、出来物が血管や神経にまで絡みついているんだ。

残念なんだけれどね、左足の関節の上くらいから切断するしかないんだよ。


、、、。そ、う、な、ん、だ。

ガクホは俯いたままだった。


ガクホ、ごめんね、ごめんね。

お母さん、早く気づかなくて。

足がおかしいって言ってたのに。

母親は泣き出した。

父親は母親の肩を抱き、唇を噛んでいた。


重苦しい。

成人病棟だって癌の告知の場に何度も何度も立ち会ってきたわ。

それとは違う、、。

リンコ場電子カルテの入力をする事で

気持ちを切り替えようとした。


先生、僕、生きたい。

サッカー好きだったけど、生きていたら

もっと夢中になれる物がみつかるよね。

 

ガクホ君、パラリンピック観たことないかい?

今はね、スポーツだって出来るんだよ。

その為にはリハビリが大切なんだけどね。


うん。わかった。

ガクホは覚悟した面持ちで、真っ直ぐ前を見ていた。


このあと、手術の為に整形外科に移ること。

手術の後には小児科に戻り、念のために化学療法を行うことなどを説明された。

ガクホは解らない事は率直に聞いていた。


こうして告知は終わった。


リンコは今夜は呑もうと思った。


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