第9話 思考

自宅に戻り、コンビニで買ったサンドイッチとタピオカミルクティーを頬張りつつ、

習慣になっているメモ書きをした。


これは、看護師になってから始めたことだ。

パソコンもあるのだけれど、手書きで

ひとつの文字から次から次へと思いつくままを

罫線を無視して書きまくる。

するとごちゃごちゃした気持ちが整理される。


ガクホと書いて丸で囲む。

そこを中心に周りに思い付いた事を書き込んでいく。

・神川ガクホ 男子 14歳 中学二年生

 学校ではサッカー部 

 オカリナを吹く

 

・病名 左足 骨肉腫の疑い

 この場合、部位から予測して、大腿骨付け根

 からの切断手術。

 転移が無ければの場合。

 

・家族構成

 父親 大手自動車メーカーのエンジニア

    有名国立大卒業

 母親 専業主婦

    短大を卒業してから結婚までは

    幼稚園の先生

・性格 母親曰く、優しい、友達が多い

    動物が好き

    

典型的ないい子ちゃん

サッカー部なら足の腫瘍と聞いて、あんな

冷静でいられるのか?

いや、冷静と言うより頭の中が真っ白?


再び逢えるとは?

そこだけ、ボールペンでグルグルと囲む。

リンコと自分の名前を書いてみた。


・毛むくじゃらの逞しい男性

・ベニと言う女性の名前を呼び、泣き叫ぶ

・アペフチカムイ

・女性からワッカと呼ばれていた

・抱いていた女性は水の事故なのか?

 それで亡くなった。ベニはこの女性の名前

 と考えていい

・ふたりの秘密の泉、そこに手紙があるらしい


わからない事だらけだわ。

患者としての情報は整理できるけど、

意味深なガクホ君の言葉や彼に触れた瞬間の

おなしな体験は意味がわからない。

アペフチカムイって?

ワッカって日本人じゃないわね。


リンコはネットで検索してみる。

あった!

アイヌ語だったのね。

ワッカは水を現す言葉なのね。

アペフチカムイは火の神。


どうもここらへんに何がヒントがあるみたい。


ふぁー、眠たい。

今夜はこのくらいにしておこう。

明日、ガクホ君にもう一度会ってみたら

何かわかるかもしれない。











    

    


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