第8話 ゆくりなくも

森野さん、わかる?声が聞こえるなら

手を握って。

声かけに意識が蘇ってきた。


は、、い、、。

わかり、、ます。


わかるのね!良かったわ。川島さーん!

森野さんの意識が戻ったわよー。

師長は勤務者全員に聞こえるように怒鳴った。


あっ、師長、ありがとうございました。

あとは私がみます。

川島はそう言った。


あら、そう?じゃ、お願いね。

初日から倒れたなんて、どうやって看護部長に報告しようかしら。

私の管理責任問題になったらと思うとゾッとするわ。


川島は貴方みたいな上司の下で働くのもゾッとしてるのよと言いたかった。


なんだったのー?と言うと突然、起き上がったリンコに川島はぎょとした。


あ、川島さんじゃないですか?じゃあここは

現実世界?


リンコ、大丈夫?

あんた、505号室で突然、倒れたのよ。

頭打ったのかしら。


リンコは眉間を人差し指でトントンとした。

あれは、夢の中での夢みたいなもの?

脳が生み出すこと?

私は記憶にない小さな頃に見たりしたものかもしれない。


リンコ!!

しっかりさなさい!

初日から倒れるなんて、新人じゃあるまいし。

自己管理がなってないわよ。

ここは子供達が相手なのよ。

不安も考えなさい。

川島はリンコにデコピンをおみまいした。


いったーー。ツツツ。

久しぶりです、川島さんのデコピン。

ゴチになります。


ばか!心配したんだからね。


あっ、ガクホ君はどうしてますか?

迷惑かけちゃって、、。


あの子ね。

なんだか、様子がおかしい気がするの。

だってね、倒れてるリンコを恐ろしいものでも見るように青ざめてたの。

そして、小さな声で、こんなところで再び逢えるなんてって言ったのよ。

みんなは、突然看護師がぶっ倒れたらショックに決まってるって。

でも、なんか違和感があるのよね。

まさか知り合いじゃないわよね?


再び逢える、、。

夢じゃないのかもしれない。

リンコは確信めいたものを感じた。



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