第7話 湖

ベニ!ベニ!シッカリシロ!


ううーん。頭が痛いし、ボンヤリするわ。

リンコは目を覚ました。

誰よ、大きな声で。うるさいわね。


ええ、ええーえーー!

誰かの頭の中にいる、だって、ベニって呼んでるの私だもん。

おまけに、何よ、この体。毛むくじゃらで、ゴツゴツしてる!

そんでもって、なんか、女の人抱きしめてるよ。あわわわ。

リンコは仕事を離れるとおっちょこちょいであわてんぼうだった。

おちつけー、リンコ、どんな時でも冷静に状況を観察するのが看護師でしょ!

リンコは眉間に人差し指を当ててトントンとした。落ち着く時のおまじない。



ふぅー。落ち着いた。どうなってるのかしら?

えっ!何!抱いてる女性びしょびしょじゃない。

あっ湖があるわ。もしかして、入水した?

救命措置がいる??

なんて事を考えていると。


ワッカ、、、。

ごめんね。泣かないで。

ワッカ、ふたりの泉に行ってね。

そこにワッカと私だけがわかる手紙が置いてあるわ。


そう言って、女性の手はワッカの手からするりと落ちた。


うそ、うそでしょう!死んだの!

おい、毛むくじゃら男、何やってんのよ!

人口呼吸器しなさいよ!!

リンコは叫んだけれど、からだを動かす事も声も出せなかった。


うおおーん、うおおーん!

アペフチカムイ、ベニ、マモレ。

毛むくじゃら男が叫ぶと湖面の水が泡のように

キラキラと天へと弾けて飛んだ。


ううう。胸が苦しい、頭がガンガンするわ。

もう、ダメ、、。

リンコはここでも気を失った。

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