雨降りとカボチャ売り

 雨アメザアザア。

 一昨日から降り続けている雨は、今も港町をぬらし続ける。

 しとしと雨だが、こうも続くとカボチャ商売アガッタリだ。


 女の子は軒の日さしの影で降って来る雨をしのいだが、地面を弾く雨粒がぽちゃぽちゃ靴やズボンを濡らすし。雨漏りの雨だれが、時折、茶色の髪を濡らすし。ティシャツ姿では少し寒いし。それとお客さんがやって来ないし。


 女の子は雨がカボチャだったらと思う。曇り時々カボチャ。天からカボチャが次々と降って来る。各家庭フルレパートリーの料理でも追いつけらない数のカボチャたち。


 ん? 待って? と女の子は夢想を中断し、ちょっとリアリストになる。


 カボチャが石造りの家々に降って来る。

 はるか高い雲から。


 ヒュー、ドカーン。

 街はカボチャに破壊され、大パニックだ。


 通行人Aなど、頭の打ちどころが悪ければ、ヤラレテしまうかもしれない。連続カボチャ殺人事件だ。


 今読んでいる本がアクションサスペンスだからだろうか。カボチャウォーズⅢ、安楽帝国の復讐、のような夢すらも見てしまった。


 やっぱりそこはカボチャジュースまでよね。

 なんて一人納得していると、買い物かごを抱えてオバチャンが一人。


 久しぶりのお客さんがやって来たようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る