カボチャ売りとモンシロチョウ

 赤緑黄のカボチャに囲まれて女の子が一人。

 暖かな日差しに、くくっと伸びをする。あくびまでおまけについてくる。


 モンシロチョウがひらりひらり。緩やかに飛ぶというよりは、舞う。というより浮かんでいるような。


 女の子は朗らかな笑みを浮かべ、「わたしにもこんな羽があったらなぁ」なんて思う。


 あっちの宿屋にカボチャを運んで、あっちの喫茶店にカボチャを運んで、あのお爺さんにカボチャを運んで。

 それで帰り際に夕日に染まる街を見下ろして。

 そのまま星空へと一旅行するのも良いなぁ。天の川をぷかぷかと揺れて。


 そんなことを想っていると、そのまま時は日没へ。


「今日はお客さん、来なかったなぁ」


 なんて、それでも足取りは軽く、カボチャ売りの女の子は家路に着く。

 海風は心なしか追い風となり、女の子を進めるサワサワとした音を立てる。

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